里山って いいな

里山・低山の魅力を伝えていきたいと思います

「樹名板」考・その参。決定打は、QRコードを活用した「スマホ音声ガイド」か?! 研究は、まだまだ続きます……。

 「あっ」
 これを目にした時、思わず声を出してしまいました。
 これこそ、私が昨年から密かに考えていたことだったからです。

 f:id:miffy17s:20210308173608j:plain:right:w330場所は、「ほとぎの里緑地」(長久手市)南部の「ほとぎの里」。その入り口にある「ほとぎの里交流館」のフェンスにかけられている一枚の樹名板を見た時のことです。
書かれているのは植物名の「ムベ」とQRコードだけ。取り付けたのは、この緑地の保全管理活動に取り組んでいる「長久手みなみ里山クラブ」さんです。
 QRコードは、以前から《何とか北高上緑地で活用できないかな》と考えていたので、《既に導入済みか!》と「先を越された感」を覚えました。
 現在ではカメラ付き携帯電話端末の多くがQRコード対応になっており、内蔵カメラでコードを撮影し、QRコードの情報内容を認識させることができます。
 f:id:miffy17s:20210308173604j:plain:left:w320試しに、このQRコードスマホで読み取ってみました。ディスプレイに瞬時に表示されたのは、 フリー百科事典「Wikipedia」の中の「ムベ」を紹介したページでした。
 このQRコードがなければ、検索して画面に表示させるには手間暇がかかりますが、そうした煩わしさもなく、ムベの概要や特徴、実の写真など、かなりたくさんの詳しい情報を手に入れることができます。
 しかも、「知りたいと思ったその時に、その場で、瞬時に」というところが"みそ"ではないでしょうか。 

 ところで、前回の「『樹名板』考・その弐」で、「スペースは限られています。誰のために、どんな情報を盛り込めばいいのでしょうか。悩みは尽きません」と書きました。こうした悩みを持っていたのは、日進里山リーダー会の先輩も同様のようで、いろいろな工夫をされています。いくつか紹介します。
f:id:miffy17s:20210307231441j:plain:left:w320f:id:miffy17s:20210307231452j:plain:right:w320 まずは写真入り。色や形の形容が難しいのが花です。そこで、思い切って活字を減らし、大きめの写真を付けました。フモトスミレやマキノスミレです。情報伝達能力として、活字は写真にかないません。特に、花が咲いていない時期には、有力です。
 f:id:miffy17s:20210223163136j:plain:right:h350ただし、活字と写真の両立が難しいケースもあります。例えば、トウカイコモウセンゴケ。写真を2枚使っているので、12㌢四方のスペースには収まり切れません。このため、活字の説明の下に写真を2枚加え、全体で通常の1.5倍のサイズにしてあります。

 f:id:miffy17s:20210307235022j:plain:left:h38012㌢四方の用紙を2枚使ったケースもあります。その一つが秋の七草のひとつ、ヤマハギです。
 用紙の1枚目は、ヤマハギそのものの説明。そして2枚目は「秋の七草とは?」「春の七草とは?」というクイズ(出題は1枚目)の回答が書かれています。
 以前は、クイズの回答は1枚目の裏側に張ってありましたが、見ずらいことから2階建てに変更しました。
 クイズを出題したり、ちょっと変わった名前の由来や雑学的な面白い話を書き添えると、雑木林の散策が楽しくなるのは確かですが、樹名板が大きくなってしまう欠点があります。大きな森の中ですから、それほど違和感はありませんが、それでも2階建ての樹名板が乱立していると、やや抵抗感があります。

 f:id:miffy17s:20210307210149j:plain:right:w280f:id:miffy17s:20210307210220j:plain:left:w280この問題を解消する一つの手が、「樹名板」以外のツールを使うという発想です。
 北高上緑地で行われる里山体験イベント「樹木観察ツアー」や「里山保全実践講座」では、花や実の写真を付けた簡単な説明資料を参加者、受講者にお渡ししています。これらを一般の来園者にも提供するほか、もう少しまとまった冊子や本を作ってもいいかと思います。
 f:id:miffy17s:20210223163014j:plain:right:h300例えば、グリーンガイド「四季の香具山」。1990(平成2)年に当時の住宅・都市整備公団中部支社が 発行した植物図鑑で、91㌻にも及ぶ立派な冊子です。
 f:id:miffy17s:20210223162834j:plain:left:w280かなりの数の樹木について紹介されており、なかなか読みごたえがありますが、個々の説明はかなりシンプルです。情報量を増やせばページ数もぐんと増えてしまうでしょうし、それだけのものを作るとなると手間暇がかなりかかりそうですし、コストの問題もクリアしなければなりません。

 f:id:miffy17s:20210313203442j:plain:right:w200狭いスペースの中に、重要な情報をいかに多く盛り込むかで悩んでいた時、私がふと思いついたのが「音声ガイド」でした。
 美術館や博物館を訪れた際、貸し出し用の機器にイヤホンやヘッドホンをつないで耳に当てると、展示物に関する情報などが流れる"あれ"です。
 《雑木林と美術館は違うぞ》という声も出そうです。私も、そんな気がしますし、《そもそも時代遅れでは?!》という感じもしましたが、自己規制せずに、とりあえず少し調べてみました。 
f:id:miffy17s:20210310003032j:plain:left:w300 音声ガイドの最大のメリットは、展示物を聴覚からも理解することができる点。展示会の目玉となるような貴重な展示物があり、それがいくら歴史的な背景や価値があるものだとしても、解説が無ければちらっと観ただけで素通りしてしまうかもしれません。 
 仮に解説があっても、会場が混雑している場合は、パネルの文字が読めないかもしれません。
 また、小さい解説文だけでは説明できることに限界があるでしょう。
 博物館や美術館などが音声ガイドを導入しているのは、解説文よりもより多くの情報を来場者に提供することができるからにほかありません。解説文だけでは伝えきれない展示物の背景や魅力を伝えることは、来場者の満足度向上やリピート来場にもつながると言えるでしょう。
 f:id:miffy17s:20210310001451j:plain:right:w320北高上緑地で行われている「樹木観察ツアー」は春と秋の2回。「もっと多く開催を」というニーズがあっても受け入れ態勢の整備もありますし、コロナ禍のような状態では開催できない事態にもなります。
 そんな場合でも音声ガイドが用意されていれば、課題は一挙に解決されます。いつでも、誰にでも、来場者全員に均一なレベルの解説を提供することが可能になります。
 これにより、「もっと詳しく知りたい」や「会場を訪れてよかった」などと感じる来場者は増え、満足度向上やリピート来場にもつながりそうです。

 「雑木林と美術館は違う」どころか、同じような課題を持っているような気がします。それに《音声ガイドなんて、そもそも時代遅れでは?!》といった先入観も"外れ"だと分かってきました。
 f:id:miffy17s:20210309234851j:plain:left:w320今、注目されているのは、施設来場者のスマホで解説を聞くことができる「スマホ音声ガイド」。①導入コストが安い②サーバーの管理や維持費などの、ランニングコストが安い③音声や画像、テキストなどの内容修正や削除・追加が簡単にできる―ほか、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染の心配もなく衛生面で安心できるといったメリットが期待できます。
 「ブラウザタイプ」なら、Webサイトを見るのと同じようにブラウザを開くだけで音声ガイドページを見ることができる、というもので、QRコードを読み取るだけでダイレクトにそのページにアクセスができ、誰でもすぐに音声ガイドを聴くことができるのが特徴です。

 《えっ》と、思わず声を出してしまいました。
 スマホQRコード→即、アクセス→音声ガイド
 なんと、これは、冒頭で紹介した「QRコード付き樹名板」が進化した「音声ガイド」版ではありませんか 。テキストでなく音声なら、スマホ画面に目を落とすことなく、樹木を目で観察しながら耳から特徴だけでなく、名前の面白い由来、思わず「へぇー」とうなってしまいそうな雑学まで楽しむことができそうです。
 自前でつくるとなると、いろいろ大変かもしれませんし、クリアできない課題がでてくるかもしれませんが、素人でも動画をQRコードに埋め込むのが簡単な時代。何とかなるでしょう。自前で用意すれば、なんといっても「イニシャルコストゼロ」。「ランニングコスト」も「ゼロ」。
 「森の中のあちこちにQRコードがあふれているのはいかがなものか」という声も出そうですが、ネット時代の便利なツールとして活用法を検討する価値はありそうです。
 
 f:id:miffy17s:20210314111321j:plain:right:w400でも、スマホをお持ちでない方、「やっぱり紙の方がいい」という方もいらっしゃると思います。となると、「QRコード付き樹名板」(テキスト、動画、音声)とリーフレットや小冊子の2本立て、ということになるのでしょうか。
 デジタルかアナログか、その両方か…?!

 「里山のぽんぽこりん」の研究は、まだまだ続きます。   
                          (終わり)
 
※今回のシリーズは、とりあえず3回で終了です。参考までに「『樹名板』考」の「その壱」「その弐」へのリンクを貼っておきました。
miffy17s.hatenablog.com
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