北高上緑地のコバノミツバツツジが14日、開花しました。樹々の展葉もどんどん進んでいます。いよいよ本格的な春到来ですね!!
「北高上緑地のコバノミツバツツジが開花したよ」
携帯電話の向こうから、弾んだ声が響いてきました。
心なしか、やや興奮している感じです。というこちらも同様です。
日進里山リーダー会の先輩から電話がかかってきたのは、14日昼過ぎのことです。
実は、その時、北高上緑地へ出かけるのをためらっていたところでした。というのは、この日、東京でも桜が開花したというニュースが飛び込んできたので、《そろそろかな》とは思っていたのです。毎年、ソメイヨシノとコバノミツバツツジの開花は、ほぼ同時期だからです。しかし、この日は天気は良いものの北寄りの風が結構強かったため《今日は、お預けか》などと勝手に判断していました。
そんな時にかかってきた1本の電話。昼食は後回しにして、すぐに「顕微鏡撮影」ができるコンパクトカメラと望遠レンズを装着した一眼レフをバッグに押し込み、車に乗り込みました。
桜の「開花」とは「標本木のつぼみのうち、5~6輪の花が咲いた状態」を言うのだそうです。場所、樹種が異なっても、だいたいこの基準に準拠していると思います。ですから、電話がかかってきた時、こう問い返してしまいました。
「やはり、中尾根道の標本木ですか?」
ところが…
「それが、違うんだよ」
という返事でした。
北高上緑地に到着。開花したというコバノミツバツツジが自生している場所を聞いておいたので、まっすぐに向かおうと思いましたが、《どうせ、緑地全域をくまなく確認しなければならないのだから》と、通常の巡回ルート通りに歩き始めました。
週末の12日から13日にかけてかなりの雨が降り、14日は気温がかなり上がったせいでしょうか、前回、北高上緑地を訪れた10日から4日しかたっていないのに、雑木林の装いはかなり変わっていました。
4日前に開花を確認したマキノスミレは、花を開いた株の数が一気に増え、10株ほどを確認しました。
「うわー、こんなに咲いているわ」。散策に訪れた女性が、うれしそうな声を上げました。
地上高3~4㌢と小さいので、注意して足元を見つめていないと見逃してしまいます。
急ぎ足で歩こうと思うのですが、モンゴリナラ(フモトミズナラ)の展葉が確認できたり、あちこちの樹々のつぼみが膨らんでいたりしていたため、立ち止まっては写真撮影し、歩いてはまた立ち止まって写真を撮る…の繰り返しで、思った以上に時間がかかります。
ヒサカキの花の開花は4日前に確認したばかりですが、北高上緑地の至る所で満開となっているのが目立ちます。とても小さな花なので、目を凝らして見てくださいね。
10日に南入り口駐車場からコナラの芽吹きを確認しましたが、この日は間近の大崖道・見晴らしポイントから望遠レンズを向けました。樹冠の芽吹きを、さらに近くから見ることができるとうれしいのですが…。
フモトスミレも元気に育っていました。4日前はとても小さかったのに、春の陽をたっぷり浴びて、ぐんぐん成長しています。
所々にコバノミツバツツジがぽつりぽつりと自生しており、目を凝らして探すのですが、花が開いているのは何株かのうちのたった1株に、しかもわずか「1輪」といった具合です。
ようやく目印として教えられた南尾根山道の「ネズ」のそばにたどり着いた時、思わず目を奪われました。
北側の斜面を数㍍下った陽だまりに、コバノミツバツツジがぽつんと1株自生しており、枝いっぱいに花を咲かせていたのです。
青い空をバックに、薄紫色の花が映えます。素晴らしいコントラストです。
「長い間待ち続け、ようやく会うことができた」といったところです。
実は、ここは、北高上緑地内に3カ所あるコバノミツバツツジ群落では全くなく、この株も毎年最初に開花する標本木ではありませんでした。全くノーマークだっただけに、少し驚きました。
本来の意味での「開花宣言」とは違うかもしれませんが、先輩会員の判断通り「開花」を宣言することにしました。
昨年は中尾根道の群落に自生する標本木が10日ごろに開花しているので、それに比べると4日ほど遅いようですが、例年に比べれば一週間ほど早くなっています。
場所は、南尾根山道の「ヒサカキ広場」と「丘の上広場の」中間あたり。道の上をふさぐように「ネズ」が生えている所から数㍍北です(地図参照。クリックすると拡大表示されます)。ネズは樹名板がついているので、すぐに分かると思います。尾根道から数㍍下った谷筋の斜面で足場が悪く、付近にはかぶれを起こす樹も生えているので、近づくときには注意が必要です。
例年、最も早く開花する株がある中尾根道の群落も訪ねてみました。標本木周辺には10株ほど固まっています。どの株もつぼみがどんどん膨らんでいて、遠くから見ても薄紫色が目立つようになっています。でも、花が開いているのを確認できたのは10株のうちの1株だけ。しかも、たった1輪だけでした。それでも「開花宣言」が出せるのは間近。「秒読み」に入っています。
南尾根里道と大レンガ堰堤広場のコバノミツバツツジ群落は、中尾根道の群落に比べるとやや遅れており、薄紫色が目に付くといった感じは全くありません。いずれも、広い群落の中で花が開いているのは、わずかに1株。しかも、たった1輪です。
ところで、南入り口駐車場南側の土手に植えられているソメイヨシノのつぼみは、ご覧の通り。かなり膨らんできたのは確認できましたが、開花までにはもう少し時間がかかりそうです。
その他の樹々の展葉の様子をお届けします。生命の息吹をたっぷりと感じ取ることができます。まさに、うれしい春到来です。
左上から時計回りに①モンゴリナラ(フモトミズナラ)②ミヤマガマズミ③ウスノキ(カクミノスノキ)④モチツツジ⑤ネジキ⑥ゴンズイ
※写真をクリックすると拡大表示されます。アップでお楽しみください。
「樹名板」考・その参。決定打は、QRコードを活用した「スマホ音声ガイド」か?! 研究は、まだまだ続きます……。
「あっ」
これを目にした時、思わず声を出してしまいました。
これこそ、私が昨年から密かに考えていたことだったからです。
場所は、「ほとぎの里緑地」(長久手市)南部の「ほとぎの里」。その入り口にある「ほとぎの里交流館」のフェンスにかけられている一枚の樹名板を見た時のことです。
書かれているのは植物名の「ムベ」とQRコードだけ。取り付けたのは、この緑地の保全管理活動に取り組んでいる「長久手みなみ里山クラブ」さんです。
QRコードは、以前から《何とか北高上緑地で活用できないかな》と考えていたので、《既に導入済みか!》と「先を越された感」を覚えました。
現在ではカメラ付き携帯電話端末の多くがQRコード対応になっており、内蔵カメラでコードを撮影し、QRコードの情報内容を認識させることができます。
試しに、このQRコードをスマホで読み取ってみました。ディスプレイに瞬時に表示されたのは、 フリー百科事典「Wikipedia」の中の「ムベ」を紹介したページでした。
このQRコードがなければ、検索して画面に表示させるには手間暇がかかりますが、そうした煩わしさもなく、ムベの概要や特徴、実の写真など、かなりたくさんの詳しい情報を手に入れることができます。
しかも、「知りたいと思ったその時に、その場で、瞬時に」というところが"みそ"ではないでしょうか。
ところで、前回の「『樹名板』考・その弐」で、「スペースは限られています。誰のために、どんな情報を盛り込めばいいのでしょうか。悩みは尽きません」と書きました。こうした悩みを持っていたのは、日進里山リーダー会の先輩も同様のようで、いろいろな工夫をされています。いくつか紹介します。
まずは写真入り。色や形の形容が難しいのが花です。そこで、思い切って活字を減らし、大きめの写真を付けました。フモトスミレやマキノスミレです。情報伝達能力として、活字は写真にかないません。特に、花が咲いていない時期には、有力です。
ただし、活字と写真の両立が難しいケースもあります。例えば、トウカイコモウセンゴケ。写真を2枚使っているので、12㌢四方のスペースには収まり切れません。このため、活字の説明の下に写真を2枚加え、全体で通常の1.5倍のサイズにしてあります。
12㌢四方の用紙を2枚使ったケースもあります。その一つが秋の七草のひとつ、ヤマハギです。
用紙の1枚目は、ヤマハギそのものの説明。そして2枚目は「秋の七草とは?」「春の七草とは?」というクイズ(出題は1枚目)の回答が書かれています。
以前は、クイズの回答は1枚目の裏側に張ってありましたが、見ずらいことから2階建てに変更しました。
クイズを出題したり、ちょっと変わった名前の由来や雑学的な面白い話を書き添えると、雑木林の散策が楽しくなるのは確かですが、樹名板が大きくなってしまう欠点があります。大きな森の中ですから、それほど違和感はありませんが、それでも2階建ての樹名板が乱立していると、やや抵抗感があります。
この問題を解消する一つの手が、「樹名板」以外のツールを使うという発想です。
北高上緑地で行われる里山体験イベント「樹木観察ツアー」や「里山保全実践講座」では、花や実の写真を付けた簡単な説明資料を参加者、受講者にお渡ししています。これらを一般の来園者にも提供するほか、もう少しまとまった冊子や本を作ってもいいかと思います。
例えば、グリーンガイド「四季の香具山」。1990(平成2)年に当時の住宅・都市整備公団中部支社が 発行した植物図鑑で、91㌻にも及ぶ立派な冊子です。
かなりの数の樹木について紹介されており、なかなか読みごたえがありますが、個々の説明はかなりシンプルです。情報量を増やせばページ数もぐんと増えてしまうでしょうし、それだけのものを作るとなると手間暇がかなりかかりそうですし、コストの問題もクリアしなければなりません。
狭いスペースの中に、重要な情報をいかに多く盛り込むかで悩んでいた時、私がふと思いついたのが「音声ガイド」でした。
美術館や博物館を訪れた際、貸し出し用の機器にイヤホンやヘッドホンをつないで耳に当てると、展示物に関する情報などが流れる"あれ"です。
《雑木林と美術館は違うぞ》という声も出そうです。私も、そんな気がしますし、《そもそも時代遅れでは?!》という感じもしましたが、自己規制せずに、とりあえず少し調べてみました。
音声ガイドの最大のメリットは、展示物を聴覚からも理解することができる点。展示会の目玉となるような貴重な展示物があり、それがいくら歴史的な背景や価値があるものだとしても、解説が無ければちらっと観ただけで素通りしてしまうかもしれません。
仮に解説があっても、会場が混雑している場合は、パネルの文字が読めないかもしれません。
また、小さい解説文だけでは説明できることに限界があるでしょう。
博物館や美術館などが音声ガイドを導入しているのは、解説文よりもより多くの情報を来場者に提供することができるからにほかありません。解説文だけでは伝えきれない展示物の背景や魅力を伝えることは、来場者の満足度向上やリピート来場にもつながると言えるでしょう。
北高上緑地で行われている「樹木観察ツアー」は春と秋の2回。「もっと多く開催を」というニーズがあっても受け入れ態勢の整備もありますし、コロナ禍のような状態では開催できない事態にもなります。
そんな場合でも音声ガイドが用意されていれば、課題は一挙に解決されます。いつでも、誰にでも、来場者全員に均一なレベルの解説を提供することが可能になります。
これにより、「もっと詳しく知りたい」や「会場を訪れてよかった」などと感じる来場者は増え、満足度向上やリピート来場にもつながりそうです。
「雑木林と美術館は違う」どころか、同じような課題を持っているような気がします。それに《音声ガイドなんて、そもそも時代遅れでは?!》といった先入観も"外れ"だと分かってきました。
今、注目されているのは、施設来場者のスマホで解説を聞くことができる「スマホ音声ガイド」。①導入コストが安い②サーバーの管理や維持費などの、ランニングコストが安い③音声や画像、テキストなどの内容修正や削除・追加が簡単にできる―ほか、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染の心配もなく衛生面で安心できるといったメリットが期待できます。
「ブラウザタイプ」なら、Webサイトを見るのと同じようにブラウザを開くだけで音声ガイドページを見ることができる、というもので、QRコードを読み取るだけでダイレクトにそのページにアクセスができ、誰でもすぐに音声ガイドを聴くことができるのが特徴です。
《えっ》と、思わず声を出してしまいました。
スマホ→QRコード→即、アクセス→音声ガイド
なんと、これは、冒頭で紹介した「QRコード付き樹名板」が進化した「音声ガイド」版ではありませんか 。テキストでなく音声なら、スマホ画面に目を落とすことなく、樹木を目で観察しながら耳から特徴だけでなく、名前の面白い由来、思わず「へぇー」とうなってしまいそうな雑学まで楽しむことができそうです。
自前でつくるとなると、いろいろ大変かもしれませんし、クリアできない課題がでてくるかもしれませんが、素人でも動画をQRコードに埋め込むのが簡単な時代。何とかなるでしょう。自前で用意すれば、なんといっても「イニシャルコストゼロ」。「ランニングコスト」も「ゼロ」。
「森の中のあちこちにQRコードがあふれているのはいかがなものか」という声も出そうですが、ネット時代の便利なツールとして活用法を検討する価値はありそうです。
でも、スマホをお持ちでない方、「やっぱり紙の方がいい」という方もいらっしゃると思います。となると、「QRコード付き樹名板」(テキスト、動画、音声)とリーフレットや小冊子の2本立て、ということになるのでしょうか。
デジタルかアナログか、その両方か…?!
「里山のぽんぽこりん」の研究は、まだまだ続きます。
(終わり)
※今回のシリーズは、とりあえず3回で終了です。参考までに「『樹名板』考」の「その壱」「その弐」へのリンクを貼っておきました。
miffy17s.hatenablog.com
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日進市の2020(令和2)年度災害ボランティアセンター開設・運営訓練が13日、中央福祉センターで行われました。
新型コロナウイルスの影響で、昨年度の災害ボランティアセンター開設・運営訓練、本年度の災害ボランティアコーディネーター養成講座が中止となったため、本番に近い形での訓練が行われるのは昨年2月に開かれた同養成講座の時以来、1年1か月ぶり。主催した同市社会福祉協議会のほか日進災害ボランティアコーディネーターの会、市内各地の自主防災会関係者ら約40人が参加しました(写真はクリックすると拡大表示されます)。【注】
訓練の目的は2つ。第1は、「災害ボランティアセンター」そのものを知ってもらうこと。その上で、「災害ボランティアセンター」と「各地域」が連携することの必要性を感じてもらうことです。
そして、今回の訓練の主眼は①コロナ禍との向かい合い方②屋外での初めての訓練実施―の2点です。
災害時には、センターのスタッフとなる社協職員や災害ボランティアコーディネーターの会メンバー、各地から駆け付けるボランティアらでかなり多くの人が交錯することになるため、いかに「密」にならないようにするかといった工夫が求められます。
さらに、訓練はこれまでは室内でしか行ったことがありませんでしたが、地震などにより中央福祉センターが損壊して屋内に災害ボランティアセンターを開設することができなくなった場合などを想定して、屋外での訓練実施が求められていました。
このため、当初は中央福祉センター北側駐車場を利用したプランが計画されていましたが、あいにくの悪天候のため、急遽、連年通り室内での訓練に変更されました。
会場が室内に変更されたことに伴い、新型コロナウイルス感染防止対策の観点から、訓練の内容も縮小。各係担当者からの指示や説明を聞いて駆け付けボランティア役が本番並みに実際に行動するのではなく、各係担当者がそれぞれの部署で行う業務や、ボランティアに対しどのような指示や説明をするかなどの概要を説明する形式に変更されました。
午前9時30分から始まり、訓練の目的や被害想定の説明があった後、早速、訓練開始。
日進災害ボランティアコーディネーターの会のメンバーが①案内②事前オリエンテーション③受け付け④活動紹介⑤活動オリエンテーション⑥資機材貸し出し⑦活動フォローの各ブースに分かれて待機。駆け付けボランティア役となった社協職員、自主防関係者が会場を順に回って、各ブースの担当者から業務概要の説明を受けました。
新型コロナウイルス感染防止のため、説明役のコーディネーターの会メンバーは、マスクだけでなくフェイスシールドも着用。駆け付けボランティア役の皆さんは、「密」になることを避けるため5~6人単位の4グループに分かれ、時間差を設けて会場を回っていただきました。
災害ボランティアコーディネーターとして私が心がけたのは、いかにスムーズにボランティアを活動現場に送り出すかという点。詳しく説明しすぎると時間がどんどん経ってしまい、ボランティアのやる気を削いでしまうので、どのくらいの時間を割き、どの程度まで説明するのがよいかなどを他のメンバーらと話し合ったり、資料の掲示方法、マニュアルの改善点などの課題を拾い出しながら作業を進めました。
このようにして、「駆け付けたボランティア」と「被災した住民の困りごと(ニーズ)」がどのようにして結ばれ、復興支援ボランティア活動につながるかを学びました。
そして、その後のミーテイングで社協の担当者から説明があったのは、それぞれの「弱点」。
一例として、次のような点が挙げられました。
①災害ボランティアセンターの弱点…困りごと(ニーズ)が上がってこないと運営ができない。
②駆け付けボランティアの弱点…日進市(被災地域)の細かい地理が分からない。とにかく何かしたい!!
③助けてもらいたい住民の弱点…ボランティアが来てもらえる仕組みを知らない。
「こうした問題を解決し、効率良い活動を実現させため、区・自治会・自主防災会など地域の皆さんとぜひ連携をしていきたい」と強調していました。
この日浮かび上がった課題などは、日進災害ボランティアコーディネーターの会の定例会などで議論を深め、今後の活動に生かしていきたいと思います。また、駆け付けボランティア役を担ってくださった方々から寄せられた声、アンケートの内容も大いに参考にさせていただきます。
マニュアルを読んでばかりいても仕方がありません。訓練を重ねて場数を踏み、いざという時のために十分備えておきたいと思っています。
【注】
①災害ボランティアセンター 被災地に全国から駆け付けるボランティアを被災者のもとへスムーズに派遣し、すみやかな復旧・復興を支援するために日進市社会福祉協議会が設置します。同センターは次のことを行います。
1. 全国から駆け付ける「ボランティア」の受け付け
2. 被災した市民からの「ニーズ(困りごと)」の受け付け
3. 「ボランティア」と「ニーズ」をマッチングし、被災者のもとへボランティアを派遣する
②災害ボランティアコーディネーター 災害ボランティアセンターに駆け付けた「ボランティア」と「ニーズ」をつなぐ人。ボランティアに安全に活動してもらうため、また被災された方に安心して利用いただき、速やかにボランティアを派遣するために重要な役割を果たします。社会福祉協議会は、日進市、日進災害ボランティアコーディネーターの会と協力し、毎年「養成講座」を開催し、コーディネーター増員に努めています。
北高上緑地で10日、マキノスミレの開花を確認。コナラの標本木の芽吹きも目視できました。
日中は季節感が変わってしまうほどの暖かな陽気に恵まれた10日、日進市の北高上緑地でマキノスミレの開花(写真㊤)と、毎年最も早く芽吹くコナラの標本木の一斉芽吹きを確認しました。コバノミツバツツジの標本木の蕾も急速に膨らんでいます。名古屋地区の桜の開花予想となっている16日前後には、北高上緑地のコバノミツバツツジも開花を迎えそうな気配。来週は、里山も一気に春本番といった雰囲気になりそうです。
マキノスミレの開花を確認したのは、南入り口から緑地に入ってすぐ、こもれびの道と南砂防広場へ向かう散策路の分岐一帯(地図参照。クリックすると拡大表示されます)。
3月1日には開花間近という状態(写真㊧)でしたが、それから10日も経たないうちに10株以上がきれいに開花しました。
地上茎はなく、地下茎から根生葉を出しています。葉身は細長い三角形~ハート型。葉の先端を上に向けてぴんと垂直に立ち上がっているのが特徴的です。可憐な花は赤紫色~濃赤紫。唇弁に紫色の筋が入っています。唇弁基部が後ろに細長く突き出して距になっており、色は花とほぼ同色……(写真㊤)。よく観察するとこんな感じですが、地上高1~2㌢と小さいので、見落としてしまいそうです。
もう一つ目を引いたのは、コナラの芽吹き。コナラは北高上緑地を代表する樹木の一つで、至る所で目にしますが、毎年、トップを切って芽吹きが見られ、標本木ともされているのは、大崖道・見晴らしポイントのすぐ東にあるコナラ。見晴らしポイントからは見ることはできないようですが、北高上緑地南入り口駐車場から北方向を仰ぎ見ると、霞がかかったように樹の上部全体がぼんやりと白っぽくなっているのが目視できました(写真㊤)。
高所なので自分の目で確かめたわけではありませんが、霞がかかったように見えるのは、葉の表裏面に白っぽい毛が密生しているからのようです。「銀色に輝く」とも形容されるこの芽吹きには独特の趣があり、「女王の芽吹き」などと呼ばれています。
私が撮影したレンズは420㍉ですが、遠過ぎて詳しくは分かりません。ぜひ、近くで見てみたいですね。参考までに紹介すると、こんな感じです(写真㊤=出典:webサイト「庭木図鑑 植木ペディア」)。なるほど、「銀色に輝く」と形容されるその雰囲気が伝わってきます。
もう一つの注目は、やはりコバノミツバツツジ。中尾根道のコバノミツバツツジ群落に自生している標本木(写真㊤)を観察すると、3月1日は蕾がまだ固い状態(写真㊨)でしたが、10日には10株以上で開花直前の状態(写真㊦)になっていました。
コバノミツバツツジは、新葉の展開に先立って紫から淡紫色の花を咲かせます。里でソメイヨシノが咲くのとほぼ同じころ、北高上緑地では3カ所の群落を中心に里山一面を紫色に染め、春の訪れを実感させてくれます。このままの陽気が続けば、来週初めには開花となる見込みです。
ちなみに、ほぼ1年前の昨年3月11日、中尾根道群落の標本木はこんな感じで、既に開花していました(写真㊨)。
◇
この時期には毎年、「コバノミツバツツジまつり」(日進市主催)が開かれていますが、新型コロナウイルス感染防止対策のため、昨年に続き今年も中止が既に決まっています。
例年のような「森のコンサート」や、お汁粉の振る舞いといったイベントもなくなりますが、北高上緑地の保全・整備活動に取り組んでいる日進里山リーダー会は「コバノミツバツツジ見ごろ案内」を実施する予定です。期間は、3月27日(土)~4月4日(日)。開門の毎日午前9時から正午まで、南入り口駐車場の一画にある「みんなの小屋」前で、来園者の皆さんに情報提供をすることになっています。
◇
その他の樹木たちの10日の様子を写真でお伝えします。
上から順に①ヤマザクラ②ソメイヨシノ(南入り口駐車場)③ネジキ④ヒサカキ⑤ウメモドキ⑥タカノツメ
【写真出典、参考webサイト】
●フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」
●国営越後丘陵公園・公園の草花
●山と自然の雑学ノート
●里山再生計画
●庭木図鑑 植木ペディア
●Hanana tree
●みんなの花図鑑
●岡山理科大学 旧植物生体研究室(波田研ホームページ)
●樹木見て歩き
3月スタート。いよいよ春です。北高上緑地でヒサカキの開花を確認しました。マキノスミレも開花直前のようです。
3月がスタートした1日、曇りがちながらも4月上旬並みという陽気に誘われ、日進里山リーダー会の竹炭焼きに参加した後、2日続きで北高上緑地(日進市)を訪れました。
3月は、降り注ぐ優しい陽光の下、草木が徐々に芽吹き始める季節です。「春」の語源については諸説ありますが、草木の芽が「張る(はる)」季節だからとする説もその一つ。文字通り、植物の生命力があふれ始める季節と言えますね。
南入り口ゲートから緑地に入ってすぐ、こもれびの道と南砂防広場への分岐点で、落ち葉の中からちらっと緑色のものが顔をのぞかせているのを見つけました(写真はクリックすると拡大表示されます)。
コナラなどの枯れ葉が5㌢ほど積み重なっています。枯れ葉を丁寧に取り除くと、小さな小さな薄い紫色の葉と柄、一部に黄緑色の葉が見えました。色や葉の形などから、マキノスミレのようです。
さらに丁寧に落ち葉を取り除くと、濃い紫色の花のようなものが見えます。開花直前といったところなのでしょうか。しばらく観察を続けます。
小さな植物の生命力に感動しながら歩いていると、ふと微かなにおいにが漂ってきました。プロパンガスのようなにおいです。《さては…》と周りを見渡すと、やっぱりヒサカキの木がありました。そばに寄って目を凝らすと、小さな小さな白い花がいくつも開花しているのを見つけました。
「プロパンガスのような」と言っても、それほど強いにおいではなく、取り立てて「悪臭」というほどでもありません。「微かな」という感じです。これこそ「春の訪れを告げるにおい」です。ちなみに2月10日は、まだこんな感じでした(写真㊨)。
さて、「春」「北高上緑地」と言えば、何と言っても「コバノミツバツツジ」です。
緑地内には、至る所に5000本のコバノミツバツツジが自生しており、群落は3カ所あります。①南尾根里道の群落②中尾根道の群落(写真㊨)③大レンガ堰堤広場の群落ーです。
遠目では、まだ変化がないように見えますが、中尾根道群落の中の標本木(写真㊦)を観察すると、花芽が徐々に膨らんでいるような感じがします。
この標本北の開花は例年3月20日ごろ。ところが、昨年は10日も前の3月10日ごろに開花しました。日進里山リーダー会の先輩会員によると「緑地のコバノミツバツツジ開花を見続けてきた10数年間で初めての経験」だったそうです。
コバノミツバツツジは、緑地内のエリアによって咲く時期が異なり、4月上旬までかなり長い期間、花を楽しむことができます。全般的にみると、コバノミツバツツジの開花はソメイヨシノの開花とほぼ同時期です。
日本気象協会が発表した名古屋の桜の開花予想日は3月18日。昨年より4日早く、平年に比べると8日も早いそうです。ちなみに満開予想日は3月29日。昨年より3日早く、平年に比べると5日早くなっています。
気象庁が統計を取り始めた1953(昭和28)年以降では、3番目に早い記録になりそうです。
前の年の夏に作られた桜の花芽は一度休眠し、冬の低温で目覚めるのだそうです。これが「休眠打破」と呼ばれる現象。今季は強い寒気がたびたび流れ込んだため、「休眠打破」が順調に進んだようです。
北高上緑地の南入り口駐車場のソメイヨシノの花芽(写真㊧)を観察してみると、まだまだ固そうな感じです。明日2日は春の嵐の後、冬の寒さが戻ってくるそうです。でも、3月は全国的に気温は高めの予想。花芽の成長も早まる見通しとか。
コバノミツバツツジの開花→満開も、今年はずいぶん早くなりそうな気配ですね。
このほかのこの日の北高上緑地の様子を写真でお伝えします。
「逃げ月」2月も今日で終わり、明日から3月。いよいよ春ですね。北高上緑地の閉門も1時間繰り下げられます。
こんな言葉があります。
「一月往ぬる二月逃げる三月去る」
(いちげつ いぬる にげつ にげる さんげつ さる)
正月から三月までは行事が多く、あっという間に過ぎてしまうことを、調子よくいったもの。一月は行く、二月は逃げる、三月は去る
出典 小学館/デジタル大辞泉
月日が経つのは、本当に速いですね。この間、新年を迎えたばかりだというのに、今日で2月が終わり、明日からもう3月です。
《えー、もう3月。何もしないうちに、時間ばかりどんどん過ぎていく》とお嘆きの方もいらっしゃると思いますが、「春、到来」ということであれば、うれしいという気持ちの方が大きいかもしれません。
コロナ禍が収束して、自由に行動できるようになれば、もっとうれしいのですが…。
今日28日は、朝方は少し寒かったようですね。でも、午前中から気温がどんどん上がり、春を感じさせるような陽気に恵まれました。
今冬は寒さが厳しく、屋外で運動する機会が少なかったせいか、体重が少し、いや、かなり増えてしまいました。
そんなこともあって、体脂肪を少しでも減らそうと、昼前から日進市の北高上緑へ出かけてみました。
先週の見回りの際、樹名板(板、と言っても、ラミネート処理した紙)が破れていたり、ひもが切れていた個所がいくつか見つかったため、修復しておこうかと思ったのです。
駐車場南の土手にタンポポが咲いているのを見つけました。今まで気づかなかったので、可憐な花を見つけた時は、うれしかったですね。種類は分かりませんが、3輪ほど咲いていました。
ソメイヨシノの蕾は、まだ固そうでした。
車が何台かと止まっていて、緑地内で何組かのご夫婦や家族連れとすれ違いました。穏やかな陽気のせいでしょうか、みなさん、何となく浮き浮きしているような感じでした。
さて、明日3月1日から北高上緑地の南入り口と西入り口の閉門時刻が、16時(午後4時)から17時(午後5時)へ1時間繰り下げられます。開門時刻は午前9時で変更ありません。
3月は緑地内に5000本自生しているコバノミツバツツジが一斉に開花、4月上旬にかけて一斉に満開になります。
毎年、開花が最も早いのは、西砂防広場の東、中尾根道の群落に生えている標本木です。いつも20日前後には開花しますが、昨年は例年より10日前後も早く、10日ごろに開花しました。
さて、今年はどうでしょうか。楽しみですね。
「樹名板」考・その弐。スペースは限られています。誰のために、どんな情報を盛り込めばいいのでしょうか。悩みは尽きません。
里山や雑木林、公園などを散策していると、いろいろな「樹名板」に出合います。材質やデザイン、文字などはさまざまで、見ているだけで楽しいのですが、私が気になるのは、何といっても内容です。
昨年夏ごろ、4カ月ほどかけ、日進市・北高上緑地内の古くなった「樹名板」を付け替えたり、新たに設置したりした担当者としては当然のことです。というのは、限られたスペースの中で、どんな情報を盛り込めばいいのか、数か月の間、毎日毎日考え続けていたのですから。
日進里山リーダー会の先輩会員が以前からCD/DVDレーベル印刷ソフトを活用して作っていたので、これを踏襲しました。したがって、用紙サイズは約12㌢四方。ここに、さまざまな情報を書き込みます。
①和名。漢字表記。科や属②落葉樹か常緑樹か。分布③葉の特徴④花が咲く時期。その特徴⑤実の特徴⑥名前の由来や雑学的な話題⑦類似種との違い、見分け方…などなど。
古くなった「樹名板」を交換する場合はいいのですが、新しく作る場合は大変です。図鑑を読んだり、インターネットで調べたりしますが、ちょっとしたことの確認や雑学的な面白い情報探しなどを含め、1本の樹木だけで少なくても4~5日、場合によっては1週間以上を要することもあります。この間に集積した情報は膨大で、いかに取捨選択して12㌢四方のスペースに収めるかに苦労します。
中には、特徴や名前の由来が面白くて、それだけでも収まり切れないといった例もあります。でも、基本的な情報を捨てて、面白い話ばかり書くというわけにもいきません。
私は特段ルールのようなものは決めてはいません。しいて言えば、無味乾燥な内容ではなく、「へぇー、そうだったんだ」と思えるような情報も盛り込みたいと考えています。
「そんなものは要らん。名前だけでいい」という人がいるかもしれません。まあ、そういう人は例外と考えます。
では、どんな情報を盛り込めばいいのでしょうか。樹木に詳しくない普通の人、特に私のような素人に近い"里山初心者"の場合、個人個人で関心の対象が何なのかよく分からないケースもあります。
「花が好きなので、花についてできるだけ詳しく」という人もいれば、「雄しべがどうのこうの、雌雄異株がどうのこうのというよりも、その木がどんな"戦略"で森の中での競争を生き抜いているのか」とか、「名前の由来など、調べてもなかなか見つからないような面白い情報が欲しい」という人もいるでしょう。
私の場合、基準は一つ。自分が読んでみて「これなら面白い」と感じ、しっかりと印象に残るものを目指しています。
例えば、「漢字表記」について例を挙げて考えてみましょう。
まず、「シャシャンボ」(写真㊧)。片仮名表記だけだと、「ふーん」で終わってしまうでしょう。せいぜい「変わった名前だな」ぐらい。ところが「シャシャンボ(小小坊)」と漢字表記を付け加えるだけで、その情報が持つ意味が大きくなります。小さな果実が並んで実る様(写真㊧)を「小小坊(シャシャンボ)」と表現して名付けたのだろうと想像がつきます。
次は「リョウブ」(写真㊨)。これも、片仮名表記だけだと「変わった名前だな」ぐらいで終わってしまいますが、漢字表記も含めて「リョウブ(令法)」とすると、《何かの法令に関係があるのかな?》とピンとくる人もいるでしょう。
新芽(若葉、写真㊨)は食用になります。リョウブという名前は、飢餓に備えて貯蔵と採取を「令法(りょうぼう)」によって命じたという歴史に由来していると言われています(別の説もあります)。
もう一つは「イソノキ」(写真㊧)。片仮名表記だけだと、それだけの話になってしまいますが、「イソノキ(磯の木)」と表記すると、《里山の中なのに磯とは…? なぜ?》という疑問に結びつき、新たな興味がわいてくると思います。
参考までに、調べてみました。「『牧野新日本植物図鑑』の改訂増補版には『イソノキの語源は不明』と書いてあるそうだが、いろいろ調べているうちにこんな説が見つかった」という話がWEBサイト「ジュラのお散歩花日記(2011年7月18日付)」に掲載されているのを見つけました。興味深いので引用させていただきました。
昔 イネを束ねる時に使うワラを「結いそ(ゆいそ)」と呼び この「イソノキ」の枝も しなやかなので「結いそ」として使われた
だから当初は「結いその木(ユイソノキ)」と呼ばれていたものが いつしか「ユ」がとれて「イソノキ」になったと言うもの
「磯」の字は後から音だけで当てはめたということらしい
「なるほど。納得!」、ですね。
片仮名表記だけの樹名板もシンプルで捨てがたく、とりあえず名前さえ分かれば家に帰ってからいろいろ調べるとっかかりになるわけですから、「それでいい」という意見もあるでしょう。でも、果たして、片仮名表記だけで"新たな興味"がわいてくる可能性があるでしょうか。
自然の中で出会ったその時、その場で、漢字表記に合わせて名前の面白い由来などが分かれば、その木との出会いがとても印象的なものになるでしょう。たった2、3文字の漢字表記を付け加えるだけでも、世界がだいぶ変わってくるような感じがします。だから私は、「漢字表記は、ぜひ盛り込みたい情報の一つ」だと思っています。
このように考えていくと、すべての情報が大切に思えてきて、取捨選択ができなくなってしまいます。
私はまだまだ駆け出しの里山逍遥人なので、勉強して知り得たことは皆さんにできる限りたくさんおすそ分けしたくて、「樹名板」が情報過多になる傾向があります(写真㊤㊧=クリックすると拡大表示されます)。
「細かい情報をこんなに盛り込んで、誰が読むの? もう少し簡潔にした方がいいんじゃないかな」とアドバイスしてくれる先輩もいます。ごもっともです。
「漢字表記」は一つの例ですが、「樹名板」を作るにあたっては、「何を削って何を盛り込むか」が大切な要素になってきます。それを読む人は不特定多数(「少数」であっても)なので、おそらく評価はつけられないと思います。
こういう作業をする時は、ベテランの先輩に意見を求めがちですが、それと同時に、よく里山に散策に来ていて、「この木、なんの木ですか?」と尋ねるような方にいろいろ意見、要望を聞く方が正解が得られるような気がしています。
試行錯誤は、まだまだ続きます。