里山って いいな

里山・低山の魅力を伝えていきたいと思います

今日は立春。"春"は名のみの厳寒の中、春本番に備えてじっと頑張る冬芽たちに会いに行きました

 立春の2月3日、日進市の北高上緑地へ出かけました。今日は日進里山リーダー会が毎週水曜日に続けている定期的な見回りの日。第一水曜日ですので、私も含めて第1班の担当です。

f:id:miffy17s:20210203163407j:plainf:id:miffy17s:20210203163343j:plain]

 「春」とは名ばかりで、とにかく寒く、巡回をスタートさせた午前9時ごろにはみぞれまでぱらつきました。昨日は風が強かったせいか、折れた木の枝が散策路に多数落下しているのが目につきました。かなり長いものもあり、危険なので取り除きながら歩き、防火用水を点検したり枯れた松やリョウブなども伐採しました(写真㊤)。

 天気は芳しくはありませんでしたが、私たちの顔をほころばせてくれたのが、元気に頑張っている木々の冬芽たちです。
 冬芽は、晩夏から秋に形成され、休眠・越冬して、春に伸びて葉や花になる芽。寒さを防ぐため鱗片でおおわれています。これに対するのが夏芽。夏芽は春から夏に形成され、その年のうちに茎や花になります。
 f:id:miffy17s:20210203174310j:plain:left:h430北高上緑地内には5000本のコバノミツバツツジが自生していますが、このうち西砂防広場のすぐ東、中尾根道の群落にある標本木の冬芽(写真㊧)は、1週間前に比べ、心なしか膨らみが増しているように感じられました。標本木は毎年3月中旬、緑地内のコバノミツバツツジの中で最も早く花を咲かせます。
 群落では、一部では枯れ葉がまだ残っていたり、中に小さな種子が残る開いた果実が寂しげに枝にぶら下がり、何となく寒々とした感じがします。そんな中で、徐々に膨らんでいく冬芽を見ていると「頑張って、春に備えているんだな」と思え、愛おしくなってきます。
 南尾根十字路のすぐ西、南尾根里道の群落でも冬芽をたくさん見ることができますが、中尾根道の標本木に比べるとまだま固そうです(写真㊦㊧)。
 ※小さい写真は、クリックすると別画面に拡大して表示されます。

f:id:miffy17s:20210203154048j:plainf:id:miffy17s:20210203154011j:plain

 辺り一面コバノミツバツツジという群落の中で、たった1本だけ、ちょっと違った感じのツツジがあるのに気づきました。
 落葉しているうちは分からないのですが、今日よく見てみると、木全体がもやっと青っぽく見えます。よく観察すると、小さな小さな緑色の葉が顔をのぞかせています(写真㊤㊨)。
 もう少し成長しないとよく分かりませんが、葉の表面に伏した長い毛が散生しているので、ヤマツツジではないかと思われます。ツツジについて勉強しながら、もう少し観察を続けてみます。

f:id:miffy17s:20210203155648j:plainf:id:miffy17s:20210203155852j:plain

 このほか、写真で狙ってみたのが、ミヤマガマズミ(写真㊤㊧)とタカノツメ(同㊨)の冬芽です。
 そして、今日の最後の一枚はヤマコウバシの冬芽です(写真㊦)。ヤマコウバシはとても面白い木です。
f:id:miffy17s:20210203155916j:plain:left:w400 南入り口から北高上緑地に足を踏み入れ、左手、こもれびの道を西へ歩くと、うすいオレンジ色の枯れ葉が落葉せず枝に残ったままの木が、たくさん目に飛び込んできます。これが、ヤマコウバシです。
 この葉は、いつまでも落葉しないわけではありません。冬の間ずっと枝に残ったままの枯れ葉は、春になって新しい葉が芽吹くと、その新葉に押しのけられるようにして落葉します。
 ヤマコウバシは、そもそも熱帯または亜熱帯の樹木で常緑でしたが、それが温帯にも適用するように進化し、落葉樹になったと考えられているそうです。落葉する必要がない常緑樹の名残で、離層をつくる機能がないと言われています。離層というのは、葉が落ちる前に葉柄に生じる特殊な細胞層です。
 冬に枯れてしまっても枝から「落ちない」ことから、この時期のヤマコウバシの葉は受験生のお守りとして人気があるようです。 
 「五橋文庫」(山口県岩国)のwebサイトでは、春になって新しい葉が芽吹くまで、花芽と葉芽が一緒に入っている冬芽を古い枯れ葉が守っているかのような姿を見て、こんな趣旨の記述をしています。
 「『親が子を守る』。当たり前のことですが、物言わぬヤマコウバシに教えられます」
 「少しうがった見方になるかもしれませんが、人の人生も同じかも…。『若い人にバトンを渡したら土にかえる』…」
 「五橋文庫」は、書や画、篆刻(てんこく)などで秀でた才能を発揮した文人小林雲道人(こばやし・うんどうにん)の作品などを展示する美術館で、庭の一画にヤマコウバシが植えられているそうです。

【出典、参考webサイト】
・コバノミツバツツジヤマツツジ/岡山理科大学 旧植物生態研究室(波田研)ホームペ
 ージ
ヤマツツジ/みんなの花図鑑
ヤマツツジってどんな木?花言葉は?種類や葉、花期や実の時期を解説!/樹木事典
・ヤマコウバシ/庭木図鑑 植木ペディア
・園内花アルバム ヤマコウバシ/重井薬用植物園
・ヤマコウバシは落葉せずに気を守る、新芽が芽吹くヤマコウバシ/酒井酒造美術館・五
 橋文庫
・落ちない!/ロクさんのアクティブライフのブログ
・樹木図鑑 ヤマコウバシ/木のぬくもり・森のぬくもり
・ヤマコウバシは面白い/こばじいのブログ
・植物Q&A 常緑樹は離層を作らない?/日本植物生理学会
・冬芽、夏芽、離層/小学館 デジタル大辞泉