里山って いいな

里山・低山の魅力を伝えていきたいと思います

北高上緑地でクスノキの紅葉がピークを迎えています。落葉だけでなく、なんと落枝まで…。"自己剪定"する不思議な樹、クスノキの戦略とは?!

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 今週の半ばぐらいから、北高上緑地の景色がまたがらりと変わり始めたような気がします。
 「山笑う」という話題でブログを書いたのが3月31日。あの頃は、里山を薄紫色に染めたコバノミツバツツジや、白い花と赤みがかった新葉が特徴的なヤマザクラに浮かれていましたが、あれから1週間で雰囲気がすっかり変わりました。
 これまでは枯れ木が目に付いたのですが、みずみずしいというよりも、その一歩手前の若々しくてさわやかな葉があっという間に増えて、上空の樹々の樹冠部分が何ともにぎやかになってきたことに気付きます。
 f:id:miffy17s:20210409162527p:plain:right:h350その様子をお伝えしようと思い、今日9日もカメラを担いで北高上緑地に出かけたのですが、散策しているうちに突然心変わりし、方針を急遽、変更することにしました。というのは…。

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 南入り口ゲートから緑地に入り、いつもの巡回コース通り「大崖道」から「丘の上広場」に差し掛かった時のことです。この辺りはヒサカキの群生地なので薄暗く、普段はあまりきょろきょろしないのですが、今日はなぜか上を見上げました。
 f:id:miffy17s:20210409134148j:plain:left:w350その時でした。真っ赤に燃えるような塊が目に飛び込んできたのです。クスノキの紅葉でした(写真㊧)。
 クスノキは南入り口駐車場に何本か人工的に植栽されており、それらの一部の葉がしばらく前から紅葉、落葉していることには気づいていましたが、緑地内でその光景に出会うことは予想していなかったので、少なからず驚きました。
 というより、実は「丘の上広場」脇にクスノキが1本生えていることを今まで知らなかったのです。これまで特に気に留めることもなかったのですが、紅葉しているのがたまたま目に飛び込んできたため気づいたというわけです。
 クスノキは4月に紅葉し、落葉するという程度の知識はありましたが、詳しい生態については知りませんでしたので、いつもの通り、いろいろ調べてみました。
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f:id:miffy17s:20210409144232j:plain:left:h350 常緑樹は一年中葉を付けている樹木のことです。ですから、緑の葉をずっと付けていると思うかもしれませんが、常緑樹といえども落葉しないわけではありません。というのは、葉には寿命があるからです。
f:id:miffy17s:20210409144324j:plain:right:h350 落葉樹は一部を除き秋から冬にかけて葉を落とし、丸裸になりますから、葉の寿命は半年ちょっとです。常緑樹はそりよりも長く、クスノキの場合は原則1年のようです。
 と言っても、すべての葉が同時に落葉するわけではなく、毎年4月に新しい葉が出てくると、入れ替わるように古い葉が落ちていきます。
f:id:miffy17s:20210409171337j:plain:left:h400 その時、枝先に伸び始めた新葉、紅葉した古い葉、それに、まだ紅葉していない濃い緑色の葉が混在します。
 クスノキは、急激な強い太陽光から若葉を守るため、若葉を赤褐色にします。これは3月30日付のこのブログで紹介しました。そして、若葉は、展開すると次第に緑色になっていきます。
 古い葉が紅葉するのは、紅葉する落葉広葉樹と同じメカニズムのようです。
 添付した3枚の写真は、いずれも「丘の上広場」の一角にあるクスノキです。1枚目と2枚目の写真では紅葉があまりよく分かりませんが、3枚目の写真を見ると、信号機の色のようにカラフルなことがよく分かります。
 ただし、クスノキは暖地性の樹木なので、冬季の寒さが厳しい所では、冬にすべての葉を落としてしまうこともあるそうです。
   
f:id:miffy17s:20210409144440j:plain:right:w350f:id:miffy17s:20210409144438j:plain:left:w350 実は、あまり目立たないのですが、「丘の上広場」をさらに北へ進んだ「三角点の丘」の東、高圧送電線の鉄塔の北側に数本のクスノキが生えています。
 ここでは、張り出した枝の真下に散策路があるため、見上げれば紅葉の様子がよく見えますし(写真㊤)、葉が落葉していることにもすぐ気づきます(写真㊧)。
 もう一カ所、「こもれびの道」の途中にかなり大きなクスノキが1本あります。幹の途中に枝がなく、上の方にこんもりとした樹冠があるのですが、その樹冠の位置があまりにも高いので、注意していないと気づかずに通過してしまいます。
 このクスノキは紅葉があまり進んでおらず、落葉も落枝もほとんど見られません。

f:id:miffy17s:20210409144256j:plain:right:w350 もう一つ、面白い話があります。クスノキは、古い葉だけでなく、一部の枝を意識的に落とします。これは、「落枝」と呼ばれています(写真㊨)。
 これに関する興味深い文献を見つけました。日本植物生理学会のwebサイトです。「植物Q&A」の「クスノキの落葉、落枝」という質問と回答の中にありました。とても分かりやすく説明されているので、要約ではなく回答の一部をそのまま引用させていただきました。

枝の脱離の一番の目的は、弱った枝を落とすことにあります。クスノキはその良い例です。ある枝が生き残れるかどうかは、枝に付いている葉の光合成による稼ぎが、葉や枝の呼吸による消費を上回っているかどうかによります。植物では、赤字の枝を他の黒字の枝が助けるという事をしませんので、赤字の枝は落とされることになります。枝の脱離は赤字の枝を落とすことに働いているのです。

f:id:miffy17s:20210409144302j:plain:left:w350 その落枝を拾い集めてみました。その基部は少し膨らんで見えます(写真㊧)。これは、枝の基部に離層ができて、切り離されたことを意味しています。

 「神戸の花と木の様子」というブログの「クスノキの落枝」の中で、筆者がこんな趣旨のことを書いています。
 「クスノキ光合成が十分にできない所の枝を意識的に落とす。生きるために無駄を省く努力なのだ」
 そして、こう結んでいます。
 「クスノキはすごく大きくなる。そのクスノキも効率よく栄養をとっていくための努力を不断にしているのだ」

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f:id:miffy17s:20210331173741j:plain:right:w100 さて、いろいろ調べて、今回も多くのことを知りました。まさに《へぇ~、そうなんだぁ!》と、驚くことばかり。知らないことだらけで恥ずかしくなります。 
 駆け出し里山逍遥人こと「里山のぽんぽこりん」の勉強は、まだまだ続きます。

【出典、参考webサイト】
①庭木図鑑 植木ペディア/クスノキ
②森林・林業学習館/樟・楠
千葉県立中央博物館/クスノキ
平塚市博物館/春の落ち葉
FSC応援Project/常緑樹の落葉
⑥日本植物生理学会/植物Q&A/クスノキの落葉、落枝
⑦ECO WORKS/Dr.カーバチの虫めがね
⑧神戸の花と木の様子/クスノキの落枝
⑨植木屋じぃじ/樹木が自然と枝を落とす時