里山って いいな

里山・低山の魅力を伝えていきたいと思います

春の芽生えや若葉の時、ヤマザクラのように葉が緑ではなく赤くなるのは一体なぜ?

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 北高上緑地のコバノミツバツツジが見ごろを迎えた30日、妻と知人を誘って観賞に行ってきました。初めて訪れたという知人はコバノミツバツツジを中心とする里山の景観(写真㊤)にすっかり魅了された様子。樹々などの解説付きで案内した私も≪お誘いして分かった≫と、うれしく思いました。

f:id:miffy17s:20210330155121j:plain:right:w350 ただ、一つだけ反省点があります。それは…。
 緑地内のあちこちで開花しているヤマザクラ(写真㊨)の下を通りがかった時、こんな説明をしました。
 「基本的に、開花と同時に葉が出ます。花が咲いた後で葉が出るソメイヨシノと違う点です。しかも、葉が緑色ではなく、赤みを帯びているのが大きな特徴なんですよ」
 これはこれでいいのですが、では「なぜ緑色ではなく、赤みがかかっているのか」という点については、きちんと説明せずに終わってしまったのです。
 知っていながら説明を怠ったのではなく、知識としてしつかり身に付けていなかったというのが本当のところです。こういうことって、よくありますよね。現象面だけ、つまり上っ面だけ触れて、原因とか、背景とか、本質についてはあまり突っ込んで考えないことって。
 そこで、反省も含めて、きちんと調べてみました。
 驚いたことに、芽生えや若葉の時に葉が赤くなる植物は、ヤマザクラだけでなく、かなりたくさんあったのです。
f:id:miffy17s:20210330182100j:plain:left:w350f:id:miffy17s:20210330174019j:plain:right:w350 現在、91種類が確認されている北高上緑地の樹木リストの中で該当するのは、8種類。写真は、ヤマザクラを除き上から順に①アカメガシワ②アラカシ③カナメモチ④クスノキシラカシ⑥シャリンバイ⑦モッコク。
f:id:miffy17s:20210330195027j:plain:left:w350 どうやら春の赤い葉は、秋の紅葉と同様、「アントシアニン」という物質が関与しているらしいのですが、次に驚いたのは、どちらも原因というか理由については「はっきり分かっていない」のが現実、ということです。
f:id:miffy17s:20210330194540j:plain:right:w350 諸説あるようですが、「分かっていること」こと、「証明されている」ことも、いくつかあるようです。
 日本植物生理学会のホームページにある「植物Q&A」から引用します。「葉の色が新緑の時は赤で時間が経つと緑になるのはなぜですか?」という問いに対する回答です。

①葉が赤いと葉の温度(葉温)は高くなる。
②赤い色素(アントシアン)には、抗菌作用や虫の幼虫を寄せ付けない作用もある。
③赤い色素は、葉緑体(緑色色素を作り、光合成を行う器官)の発達を促進する働きと発達中の葉緑体を紫外線から守る働きを持つ。

f:id:miffy17s:20210330194517j:plain:left:w350 簡単に説明すると、アントシアニンによって寒さや食害を及ぼす虫たち、紫外線から守っている―ということになります。【注】
f:id:miffy17s:20210331063352j:plain:right:w350 f:id:miffy17s:20210330194501j:plain:left:w350まるで人間の「赤ちゃん」のようですね。赤ちゃんが文字通り赤く見えることについてもさまざまな説明がされていますが、赤い葉と共通するものも見受けられます。
 こうして葉はさまざまな外敵から守られながら成長。自分の力で外敵に対抗できるようになると、蓄積する物質が赤のアントシアニンから緑のクロロフィルに移行し、緑の葉に変わるようです。
 つまり、芽生えや若葉の時に葉が赤くなるのは、「生き残るための戦略」と言えそうですね。

f:id:miffy17s:20210331072507j:plain:right:w350 ただ、ちょっと変わっているのは①のアカメガシワ。「大崖道」の「見晴らしポイント」直下の崖に生えている赤いアカメガシワの葉を爪でこすると、何と緑色の葉が現れました(写真㊧)。赤く見えているのはアントシアニンによるものではなく、緑色の葉本体表面に赤い毛がびっしりと生えていたからだったようです。葉本体はともかく、この赤い毛はアントシアニンと関係があるのかもしれませんが…。これには少し驚きました。

 さて、いろいろ調べて、今回も多くのことを知りました。
 まさに《へぇ~、そうなんだぁ!》と、驚くことばかり。
 知らないことだらけで恥ずかしくなります。 
 でも、知らないことが多い分、知った時のうれしさもたくさんあるということです。
 知っているのと知らないのとでは大違い。
 里山で出会う樹木とも、今までとは向き合い方が違ってきます。

 時間が許す限り丁寧に調べ、一生懸命勉強してはいますが、素人故、事実誤認したり、早とちりしていることもあると思います。ご容赦を。「素人故」は、ただの甘えだとは思っていますが…。

 駆け出し里山逍遥人こと「里山のぽんぽこりん」の勉強は、まだまだ続きます。 

【注】
アントシアニンとアントシアン アントシアニン(英: anthocyanin)は、植物界において広く存在する色素、アントシアン(英: anthocyan、果実や花の赤、青、紫を示す水溶性色素の総称)のうち、アントシアニジン(英: anthocyanidin)がアグリコンとして糖や糖鎖と結びついた配糖体成分のこと。高等植物では普遍的な物質であり、花や果実の色の表現に役立っている。フラボノイドの一種で、抗酸化物質として知られる。
              出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』

【出典、参考文献・webサイト】
①日本植物生理学会/みんなの広場/植物Q&A/葉の色が新緑の時は赤で時間が経つと緑になるのはなぜですか? 
②日本自然保護協会/「自然保護」NOV./DEC 2011 №524/今日から始める自然観察/春の赤い葉 秋の赤い葉
③庭園日誌(京都の造園会社・大幸造園のスタッフブログ)/カナメモチ、春先に赤い葉を出すのはなぜ?
④自然、発見!/若葉はなぜ赤い
⑤Botanicai Artsalon/春に紅葉?  赤い若葉の謎
⑥樹樹日記/赤い若葉、新芽はなぜ赤いのか?
⑦庭木図鑑 植木ペディア/アカメガシワ、アラカシ、カナメモチ、クスノキシラカシ、モッコク、ヤマザクラ
千葉県立中央博物館/アカメガシワ
⑨三貫清水の会/赤い色で身を守る…アカメガシワ
⑩神戸の花と木の様子/クスノキの落枝
⑪植木屋じぃじ/若葉は赤で身を守る
⑪森林・林業学習館/樟・楠
⑫フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』/アントシアニンとアントシアン