北高上緑地で19日、エドヒガンとみられる桜が開花しました。ヤマザクラの赤みがかった若葉も開き始めています。里山もいよいよ桜の季節到来―。
桜便りが各地から相次いで届いています。先週に続いて今週末も春の嵐に見舞われるという予報を耳にして《天気が崩れる前に》と思い、19日午後、桜に関してはそれほど期待もせずに日進市の北高上緑地へ車を走らせました。
緑地に着き、南入り口駐車場(地図参照。クリックすると拡大表示されます)南側の土手に植えられているソメイヨシノ(染井吉野、写真㊤)をチェックしましたが、前日に比べ、《ややほころび始めたかな》という程度の変化しか見られませんでした。まあ、想定内のことです。北寄りの風をまともに受けるせいか、このソメイヨシノの開花は毎年、遅めのようです。
次は、少し期待を込めて、南入り口ゲート付近から北の斜面を見上げてみました。「期待を込めて」というのは、ここに自生しているヤマザクラ(山桜)は毎年、北高上緑地内の多くのヤマザクラの中で一番早く開花するからです。
その樹冠が何となく白っぽく見えます。《もしかして、開花!?》と心が躍り始めましたが、双眼鏡を忘れてきてしまったので確認できません。しかたがないので望遠レンズを取り出し、ファインダーを覗いてみました。画像がシャープでないのではっきりしたことは分かりませんが、白いものは見当たりません。何となく赤っぽい蕾が膨らみかけている様子は分かりますが、葉もまだ出ていないようです。残念ながら、まだ少し早いようです。
ちょっと気持ちが萎えましたが、開花したばかりのコバノミツバツツジに慰めてもらおうと、緑地に入りました。
巡回も後半に入り、「竹林の小径」を歩いていた時のことでした。全く予想もしていなかった光景に出会いました。目の前、地上2㍍ほどの枝に、なんと桜の花が何輪も咲き誇っていたのです(写真㊨)。
この桜、樹木の分類上の所属や種名を決定する「同定」がまだなされていませんが、以前から「エドヒガン(江戸彼岸)」ではないかと言われてきました。
エドヒガンなら、ソメイヨシノよりも早く咲くので「想定内」ではあるのですが、コバノミツバツツジに気を取られていたのか、期待もせずに歩いていたので少なからず驚いてしまいました。
遠くからではほとんど気づかないのですが、ふと上空を見上げて、もう一度びっくり。はるか上の方に、無数の花が確認できました(写真㊧㊦)。
葉よりも花が先に咲き、蕚筒(がくとう、花びらの付け根の膨らみ)の元が膨れているような感じがすることなどから、素人ながら私も「エドヒガン」ではないかと思いました。蕚筒の膨らみがちょっと少ないような気もしますが…。
エドヒガンは山地に自生する天然の桜の一種。関東地方でよく見られ、春の彼岸のころに咲くことからこの名がつけられたそうです。
桜の中では寿命が最も長く、「根尾谷の淡墨桜」など、樹齢1000年を超えると伝わる古木、名木は天然記念物に指定されています。
まだ断定はされていないようなので、葉が出た後なども含め、いろいろな判断材料をそろえて同定をしたいと思っています。今日のところは難しいことはさておき、とりあえず樹の根元で「春」を独り占めしながら喜びに浸りました。
しばらく歩いて「大レンガ堰堤」東のコバノミツバツツジ群生地に差し掛かった時のことです。これまた、目の前の地上2㍍ほどの枝から、赤みがかった若葉が展葉しかけているのが目に飛び込んできました(写真㊤)。若葉の特徴からヤマザクラだと思われますが、若葉と同時に開花するはずの花はまだ見当たりません。開花も時間の問題だと思います。
ところで、このヤマザクラのすぐそばに、2本の桜の樹があります。「カスミザクラ(霞桜)ではないか」とみられています。
以前は「ヤマザクラ」と思われていましたが、一部から疑義が出たそうです。
カスミザクラは、ヤマザクラより白みが強い花が満開になると霞がかかったように見えることなら名付けられたそうです。
いずれも花がまだ咲いていないため、今は花の比較はできません。
いろいろ調べていて、気になったのは1枚の写真。カスミザクラの説明の中に、今日見たヤマザクラとそっくりな色の若葉の写真が紹介されていたのです。緑ではなく、かなり赤みがかっており、ちょっと衝撃を覚えました。
その写真には、こう説明書きがありました。
「若い葉は赤みを帯びるがヤマザクラよりは淡い」
撮影時の光線の加減もあるので何とも言えませんが、よく似た色です。
このカスミザクラと思われる桜は、まだ芽吹き前なので、今は葉の比較ができません。
両者の違いは、
①ヤマザクラと異なり、カスミザクラの芽燐の先は開かない
②ヤマザクラは早咲き、カスミザクラは遅咲き
③カスミザクラは花柄と葉柄と葉の裏の葉脈に毛が生えている(葉
の表は無毛)。このため、別名「ケヤマザクラ(毛山桜)」とも呼
ばれる。ヤマザクラは、花柄、葉柄、葉の両面とも無毛
④カスミザクラの葉の裏面は淡緑色で光沢がある
などいろいろありますが、時期を追って丹念に調べないと判断できず、同定は大変難しそうです。
一部には、こんな説明もあります。
一番の特徴は幹。樹皮は暗褐色で、横に何本も線が入って縞模様のようになるので、他のさくらと見分けがつきやすい
ですが、里山初心者の私には、そんなに簡単に見分けがつきません。
今後、開花時期、花柄や葉柄、葉の様子について比較観察をしていきたいと思います。
ところで、今週、あちこちで開花が始まったコバノミツバツツジは、その後の暖かな陽気に誘われて、さらに進展。中尾根道の群落のうち、標本木とされている10株ほどの一群は早くもほぼ満開に(写真㊤㊨)。これまで、つぼみが膨らむ気配さえなかった南尾根里道の群落でも、広場のあちこちが何となく薄紫色に染まり始め、まだ2株と数は少ないものの、それぞれ1輪ずつ花をほころばせています(写真㊧)。
そのほか、あちこちの尾根脇や谷筋、広場の一角などに、群落ではなくても2株、3株と自生していて、既に5分から7分咲きとなっているコバノミツバツツジも見受けられます。
週末の春の嵐後の天気次第ですが、中止となった「コバノミツバツツジまつり」に代わる「コバノミツバツツジ見ごろ案内」が始まる27日ごろには、北高上緑地全域で見ごろを迎えるものと予想されています。
開花、展葉など成長が進むその他の草木の様子をお届けします。クリックすると拡大表示されます。
左上から①アズキナシ②サルトリイバラ③ミツバアケビ④エゴノキ⑤ムラサキシキブ⑥フモトスミレ