節分とクリスマスに登場する2つの"ヒイラギ"。「似て非なるもの」だったとは!!
2月2日は「節分」。節分と言えば「豆まき」、それとも「恵方巻」?
昔は、「柊鰯(ひいらぎいわし)」(写真㊧)を玄関先に飾るという伝統的な風習があったそうです。いや、今でもこの風習が残っている地域もあるかもしれません。伝統を引き継いでいる方がいらっしゃるかもしれません。
私は見たことがありませんが、「柊鰯」というのは、葉が付いたヒイラギの枝に、焼いたイワシの頭を刺したものだそうです。
31日の新聞折り込み広告の中に、近所のスーパーのチラシ(写真㊨)が入っていました。イワシの欄に「焼くときの煙と臭いで鬼を追い出し厄払い。食べることで邪気を払い、無病息災になると言われています」という説明がついていました。
よく見ると、ヒイラギのイラストも付いています。ですが、若い人たちは、このチラシだけでは「柊鰯」がどんなものなのか分からないことでしょう。
さらに、このスーパーのチラシで、イワシについては分かりますが、ヒイラギも使った「柊鰯」を節分に飾る意味までは分かりません。
私は「若い人」ではありませんが、その「意味」については、しばらく前まで全く知りませんでした。
そこで、パソコンにかじりつき、「柊鰯」と入力して調べまくったことを覚えています。里山逍遥を始めてから雑木林の中の木に興味が出始め、いろいろ調べている時でした。
検索結果一覧の中から、茨城県の「村松山虚空蔵堂」のwebサイトを訪ねてみました。空海(弘法大師)によって創建された寺院で、サイトには「柊鰯」の作り方や飾る時期、処分の仕方まで分かりやすく紹介されていることも思い出しました。
その一部を引用させていただきました。
柊鰯を飾る意味はズバリ「魔除け・厄除け」。
鬼の嫌いな鰯の匂いと、トゲトゲした柊の葉っぱで鬼の目を刺し、邪気の象徴である鬼が家の中に侵入してくるのを防ぐと言われています。
古来日本では「とがったもの」や「臭いもの(臭いの強いもの)」は厄除けの効果があるとされ、古くは平安時代から厄除けとして使われていたという記録があるほどです。
「柊鰯」について調べている時、もう一つ面白い話にぶつかりました。
「柊鰯」に使うヒイラギ。同じ冬のものだけに、クリスマス用のリース(輪飾り)に使うのと同じものだと思い込んていたのですが、どうやら別物らしいというのです。どちらも葉の縁に鋭いトゲがあってそっくりなのに、「似て非なるもの」だというのです。
《ええっ! どういうこと?》というわけで、調べてみました。
クリスマスリースに使ったり、クリスマスケーキのスポンジの上にはヒイラギの蝋紙細工の柊が乗っかっています。だから、ヒイラギというのは海外からやってきたものだとばかり思っていたのです。「ヒイラギ」という響きも何となく海の向こうのものという印象がありました。
勘違いの元は、ここにあったようです。
「ヒイラギ」の名前の由来は、外国語ではなく日本語だったのです。
いろいろ調べていて、「樹樹日記(じゅじゅにっき)」というwebサイトに出会いました。面白いことが書いてあったので紹介します。
ヒイラギは漢字では「柊」と書きますが、これは国字(日本で作った漢字)。私は冬に白い花が咲くので木ヘンに冬なのだろうと思っていましたが、違いました。
昔は冬のしもやけでヒリヒリすることを「ひいらぐ」と言い、「疼」の字(この漢字は中国オリジナル・日本語では「うずく」)を当てていました。葉のトゲトゲが肌に当たるとヒリヒリするので、この木を「ヒイラギ」と名づけ、「疼木」と表記したようです。それが、いつの間にか病ダレから木ヘンに変ったのです。病ダレの木は誰も庭に植えないでしょうから、多分、植木屋さんが柊という漢字を作ったのでしょう。
「植木屋さんが…」。面白い発想ですね。このサイトの筆者はコピーライターだそうです。道理でユーモアたっぷりですね。
で、クリスマスリースに使うのは「セイヨウヒイラギ」(写真㊧)なのだそうです。
「柊鰯」に使うのは日本の「ヒイラギ」で、「モクセイ科/モクセイ属」。クリスマスリースに使う「セイヨウヒイラギ」は「モチノキ科/モチノキ属」。「セイヨウヒイラギ」は「ヒイラギ」と科が違いますが、葉が「ヒイラギ」と似ているため、この和名が付けられたようです。
紛らわしい原因は、こういうことだったようですね。
なるほど、クリスマスリースはもちろん、クリスマスケーキにも飾りとして赤い実がついていますが、北高上緑地でも目にすることができる「ヒイラギ」(写真㊤㊨)には、クリスマスの時期に赤い実がついているのを見たことはありません。
webサイト「庭木図鑑 植木ペディア」には、こう記されています。
葉は似ているもののヒイラギは葉が一箇所から左右に発生する「対生」だが、セイヨウヒイラギは互い違いに発生する「互生」であり区別できる。もっとも簡単な見分け方は実の色で、セイヨウヒイラギは「赤」、ヒイラギは「黒」と決定的な違いがある。
「庭木図鑑 植木ペディア」などの説明を基に、両者の違いを補足しておきます。
「セイヨウヒイラギ」は5~6月になると前年に生じた枝の付け根に小さな白い花を数輪咲かせます。花の後に果実ができ、晩秋から色づき始め、ちょうどクリスマスのころに真っ赤になります(写真㊤)。
これに対し、「ヒイラギ」は晩秋(11~12月)にギンモクセイに似た白い小さな花が咲きます。葉陰に埋もれるように咲くのであまり目立ちませんが、微かに芳香があります。花の後に楕円形の果実ができ、翌年の初夏(6~7月)に黒紫色に熟します。
見かけはそっくりなのに、本質は真逆ともいえる2つの"ヒイラギ"ですが、「樹樹日記」の筆者が、こんなことを書いていらっしゃいます。
洋の東西を問わず葉のトゲトゲに魔除けの効果があると信じられていたのは興味深い
同感です。
さて、いろいろ調べて、多くのことを知りました。まさに《へぇー、そうだったんだぁ!》と、驚くことばかり。知らないことだらけで恥ずかしくなります。
でも、知らないことが多い分、知った時のうれしさもたくさんあるということです。