里山って いいな

里山・低山の魅力を伝えていきたいと思います

「チャン・ツィイー」が通じない?!事態に大慌て。「禰豆子」じゃないと昨今は受けないのか、と思い知る

チャン・ツィイーの『LOVERS』は、良かったですよねー」
「……」
「特に、竹林の戦い。何と言っても、あの作品最大の見せ場ですよね」
「……」
「それにしても、チャン・ツィイーはすごい!」
「……」

 なんか、おかしい。この、しらーとした雰囲気。内心、ちょっと、いや、かなり焦ってきた。
 2週間ほど前のある日。北高上緑地。地域の子どもたちが遊びに来るというので、日進里山リーダー会のメンバー数人が出迎え、案内役を務めた。
 冒頭の奇妙な会話、いや私だけの一方的なおしゃべりシーンがあったのは、ちょうど竹林に差し掛かった時のこと。
 私の話が、小さな子どもはともかく、そのお母さんたちに、まるで受けない。受けないのではなく、全く通じないのだ。

「『LOVERS』という映画、見ませんでしたか?」
「ええ。その映画、知りません。すみません」
「じゃあ、チャン・ツィイーも?」
「知りません。すいません」

 ようやく、話が噛み合ってきた。
 〈そうか、そうなんだ〉
 で、考えてみた。
 中国映画「LOVERS」が公開されたのは2004(平成16)年。何と、16年前。
 〈16年も前だったのか、あの映画。映画ファンならともかく、そうでなければ、見ていなくても、知らなくても、無理はない話か〉

 〈若い、若い〉と思っているのは自分だけで、40歳ほども年の差がある若いお母さんたちとは話題が合わないことに気づかなかった。いやはや、何とも恥ずかしい。大いに反省。

 
 先日、娘一家が遊びに来た。
 私が里山で竹林の整備についても勉強しているという話を知っているので、3歳になる孫娘が私の顔を見るなり、一気にこうしゃべり始めた。

「おじいちゃん、おじいちゃん。『ねずこのたけ』取ってきてー」
「……」
「『ねずこのたけ』だよー」
「????…」

 娘が割って入ってきてくれた。
 「『禰豆子の竹』のことよ。『鬼滅の刃』、知らないの」と言いながら教えてくれた。
 鬼になってしまったヒロインの少女が、人を食べないように口かせとしてくわえさせられた短い竹の筒。ごく簡単に言うと、こういうことのようだ。別の説もあるそうだが…。
 社会現象ともなっているので、少年漫画、テレビ・劇場版アニメの「鬼滅の刃」という名前ぐらいは知っていたが、「禰豆子」のことまではちょっと…。まして「禰豆子の竹」なんて知る由もない。

 先日の竹林での会話を思い出した。
 ただし、「……」と沈黙を繰り返したのは、今度は私の方だった。

 〈そうか。竹と言えば、昨今は『LOVERS』ではなく『鬼滅の刃』。『チャン・ツィイー』ではなく『禰豆子』なのだ!〉

 それに、「鬼滅の刃」「禰豆子」というのは、小さな子どもを対象にした意思疎通ツールではなく、原作やアニメにはまっている若いお父さん、お母さんなど幅広い世代相手にも役立つ意思疎通ツールなのである。
 
 〈こいつは、うかうかしてはいられない。時代に遅れてしまう。ことは重大である。勉強しなければ…〉

 とはいえ、長編の原作を読んだり、アニメを見に行くのも何だし…。というわけで、インターネットで「あらすじ」をにわか勉強。孫や家族が寝静まった深夜に、こっそりと。眠たい眼をこすりながら、心の中でこうつぶやいた。

 〈今度はいつ子どもたち、それに若いおとうさん、お母さんたちが北高上緑地に遊びに来てくれるかな。その時は『禰豆子の竹』を話題にして、おおいにも盛り上がってもらおう〉

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今度は、「禰豆子の竹」を話題に出して、子どもたちにも喜んでもらおう

【あとがき】
 実は、チャン・ツィイー「LOVERS」で話が盛り上がったら、もう一弾繰り出そうとして用意していた話がある。
 それは、2000(平成12)年に公開された中国・香港・台湾・米国合作映画「グリーン・デスティニー」。こちらも、一番の見どころは竹林での戦いだった。
 この映画で、チャン・ツィイーのほか、もう一人のヒロインとして登場していたのがミシェル・ヨー。私は、若いチャン・ツィイーよりも、実は17歳年上のミシェル・ヨーの方が好きだ。落ち着いていて、とても魅力的な女優さんだと思っている。
 以前、映画の宣伝を担当している知り合いの広告代理店関係者が私がミシェル・ヨーのファンだと知り、「来日する機会があったら独占インタビューができるようにセットしますよ」と言ってくれたことがあった。うれしくて、その機会が訪れる日を待ち焦がれていたが、実現はしなかった。なにせ、彼女はボンドガールの一人でもある国際的なスターなのだ。そうそう2人だけで会えるはずがない。
 ちなみに、チャン・ツィイーは現在41歳。ミシェル・ヨーは58歳。
 それはともかく、「グリーン・デスティニー」は「LOVERS」より4年も前の作品。若い世代の方々に竹林を説明するとき、場を盛り上げる素材としては、やはり、もはや「使用不可」か。残念ではある。
 というわけで、子どもたちや若い世代の方だけでなく、自分と同世代の高齢の方々が北高上緑地にたくさん来てくださることを心待ちにしている。