里山って いいな

里山・低山の魅力を伝えていきたいと思います

北高上緑地でクスノキの紅葉がピークを迎えています。落葉だけでなく、なんと落枝まで…。"自己剪定"する不思議な樹、クスノキの戦略とは?!

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 今週の半ばぐらいから、北高上緑地の景色がまたがらりと変わり始めたような気がします。
 「山笑う」という話題でブログを書いたのが3月31日。あの頃は、里山を薄紫色に染めたコバノミツバツツジや、白い花と赤みがかった新葉が特徴的なヤマザクラに浮かれていましたが、あれから1週間で雰囲気がすっかり変わりました。
 これまでは枯れ木が目に付いたのですが、みずみずしいというよりも、その一歩手前の若々しくてさわやかな葉があっという間に増えて、上空の樹々の樹冠部分が何ともにぎやかになってきたことに気付きます。
 f:id:miffy17s:20210409162527p:plain:right:h350その様子をお伝えしようと思い、今日9日もカメラを担いで北高上緑地に出かけたのですが、散策しているうちに突然心変わりし、方針を急遽、変更することにしました。というのは…。

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 南入り口ゲートから緑地に入り、いつもの巡回コース通り「大崖道」から「丘の上広場」に差し掛かった時のことです。この辺りはヒサカキの群生地なので薄暗く、普段はあまりきょろきょろしないのですが、今日はなぜか上を見上げました。
 f:id:miffy17s:20210409134148j:plain:left:w350その時でした。真っ赤に燃えるような塊が目に飛び込んできたのです。クスノキの紅葉でした(写真㊧)。
 クスノキは南入り口駐車場に何本か人工的に植栽されており、それらの一部の葉がしばらく前から紅葉、落葉していることには気づいていましたが、緑地内でその光景に出会うことは予想していなかったので、少なからず驚きました。
 というより、実は「丘の上広場」脇にクスノキが1本生えていることを今まで知らなかったのです。これまで特に気に留めることもなかったのですが、紅葉しているのがたまたま目に飛び込んできたため気づいたというわけです。
 クスノキは4月に紅葉し、落葉するという程度の知識はありましたが、詳しい生態については知りませんでしたので、いつもの通り、いろいろ調べてみました。
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f:id:miffy17s:20210409144232j:plain:left:h350 常緑樹は一年中葉を付けている樹木のことです。ですから、緑の葉をずっと付けていると思うかもしれませんが、常緑樹といえども落葉しないわけではありません。というのは、葉には寿命があるからです。
f:id:miffy17s:20210409144324j:plain:right:h350 落葉樹は一部を除き秋から冬にかけて葉を落とし、丸裸になりますから、葉の寿命は半年ちょっとです。常緑樹はそりよりも長く、クスノキの場合は原則1年のようです。
 と言っても、すべての葉が同時に落葉するわけではなく、毎年4月に新しい葉が出てくると、入れ替わるように古い葉が落ちていきます。
f:id:miffy17s:20210409171337j:plain:left:h400 その時、枝先に伸び始めた新葉、紅葉した古い葉、それに、まだ紅葉していない濃い緑色の葉が混在します。
 クスノキは、急激な強い太陽光から若葉を守るため、若葉を赤褐色にします。これは3月30日付のこのブログで紹介しました。そして、若葉は、展開すると次第に緑色になっていきます。
 古い葉が紅葉するのは、紅葉する落葉広葉樹と同じメカニズムのようです。
 添付した3枚の写真は、いずれも「丘の上広場」の一角にあるクスノキです。1枚目と2枚目の写真では紅葉があまりよく分かりませんが、3枚目の写真を見ると、信号機の色のようにカラフルなことがよく分かります。
 ただし、クスノキは暖地性の樹木なので、冬季の寒さが厳しい所では、冬にすべての葉を落としてしまうこともあるそうです。
   
f:id:miffy17s:20210409144440j:plain:right:w350f:id:miffy17s:20210409144438j:plain:left:w350 実は、あまり目立たないのですが、「丘の上広場」をさらに北へ進んだ「三角点の丘」の東、高圧送電線の鉄塔の北側に数本のクスノキが生えています。
 ここでは、張り出した枝の真下に散策路があるため、見上げれば紅葉の様子がよく見えますし(写真㊤)、葉が落葉していることにもすぐ気づきます(写真㊧)。
 もう一カ所、「こもれびの道」の途中にかなり大きなクスノキが1本あります。幹の途中に枝がなく、上の方にこんもりとした樹冠があるのですが、その樹冠の位置があまりにも高いので、注意していないと気づかずに通過してしまいます。
 このクスノキは紅葉があまり進んでおらず、落葉も落枝もほとんど見られません。

f:id:miffy17s:20210409144256j:plain:right:w350 もう一つ、面白い話があります。クスノキは、古い葉だけでなく、一部の枝を意識的に落とします。これは、「落枝」と呼ばれています(写真㊨)。
 これに関する興味深い文献を見つけました。日本植物生理学会のwebサイトです。「植物Q&A」の「クスノキの落葉、落枝」という質問と回答の中にありました。とても分かりやすく説明されているので、要約ではなく回答の一部をそのまま引用させていただきました。

枝の脱離の一番の目的は、弱った枝を落とすことにあります。クスノキはその良い例です。ある枝が生き残れるかどうかは、枝に付いている葉の光合成による稼ぎが、葉や枝の呼吸による消費を上回っているかどうかによります。植物では、赤字の枝を他の黒字の枝が助けるという事をしませんので、赤字の枝は落とされることになります。枝の脱離は赤字の枝を落とすことに働いているのです。

f:id:miffy17s:20210409144302j:plain:left:w350 その落枝を拾い集めてみました。その基部は少し膨らんで見えます(写真㊧)。これは、枝の基部に離層ができて、切り離されたことを意味しています。

 「神戸の花と木の様子」というブログの「クスノキの落枝」の中で、筆者がこんな趣旨のことを書いています。
 「クスノキ光合成が十分にできない所の枝を意識的に落とす。生きるために無駄を省く努力なのだ」
 そして、こう結んでいます。
 「クスノキはすごく大きくなる。そのクスノキも効率よく栄養をとっていくための努力を不断にしているのだ」

                ◇

f:id:miffy17s:20210331173741j:plain:right:w100 さて、いろいろ調べて、今回も多くのことを知りました。まさに《へぇ~、そうなんだぁ!》と、驚くことばかり。知らないことだらけで恥ずかしくなります。 
 駆け出し里山逍遥人こと「里山のぽんぽこりん」の勉強は、まだまだ続きます。

【出典、参考webサイト】
①庭木図鑑 植木ペディア/クスノキ
②森林・林業学習館/樟・楠
千葉県立中央博物館/クスノキ
平塚市博物館/春の落ち葉
FSC応援Project/常緑樹の落葉
⑥日本植物生理学会/植物Q&A/クスノキの落葉、落枝
⑦ECO WORKS/Dr.カーバチの虫めがね
⑧神戸の花と木の様子/クスノキの落枝
⑨植木屋じぃじ/樹木が自然と枝を落とす時

日進里山リーダー会が日進市から委託を受け、北高上緑地の散策路・広場などの巡回、維持管理作業を始めてから10周年を迎えました。

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                ◇  

 上の文と写真は、日進里山リーダー会が10年前の2011(平成23)年度に日進市から北高上緑地の維持管理業務を受託することになったことを記したブログの記事です。これは、同緑地が開園した2013(平成25)年4月1日の2年前に当たります。
 記事を書いたのは、日進里山保全リーダー養成講座(現・日進里山保全実践講座)1期生で、日進里山リーダー会創設メンバーの1人である大先輩会員。
 委託を受けた業務の内容は、散策ルートの巡回と維持管理作業。巡回業務は、週1回、緑地内の安全を確認するために行うほか、台風通過後など、必要な時に随時行うことになっています。維持管理業務は、緑地内を安全、快適に維持するため、広場や散策路の除草や除伐などを月1回程度実施するものです。
 この記事の日付は2011(平成23)年4月19日ですが、最初の散策路巡回が行われたのは第1水曜日の4月6日(水)、2回目の巡回と第1回の維持管理作業が行われたのは第2水曜日の4月13日(水)と記されています。
 今でも日進里山リーダー会はメンバーを4班に分け、年末年始を除いて巡回は班ごとに交代しながら毎週水曜日に、維持管理作業は第2水曜日を中心に月1回程度、ずっと続けています。
 そしてこの業務が今月でちょうど10周年を迎えました。
 先輩たちの努力、継続力に敬意を表したいと思います。

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 そこで、10周年を迎えた今月の最初の巡回日に当たる7日、ちょっとした遊び心から10年前の写真記録が残っているのと同じ場所を探し、仲間のメンバーと一緒に記念写真を撮ってみました。
 今日はリーダー会創設メンバーの1人も巡回に参加されたので伺ってみました。「記憶にないなー」とのことでしたので、周りの樹木や景色などを基に場所を推定しました。
f:id:miffy17s:20210326164332p:plain:left:w350f:id:miffy17s:20210407130849j:plain:right:w350 まずは、ブログに掲載された最初の1枚から。崖と散策路の境に設けられた欄干の特徴などから、「南坂道」だと推定しました。
 ㊧が10年前に撮影された散策路巡回の様子です。そして㊨が今日撮影した写真です。
f:id:miffy17s:20210326164404p:plain:left:w350  次は、ブログに掲載されている2枚目の写真です。
 これも、地形や周囲の樹木の特徴などから、「南坂道」の途中に設置された防火水槽(現在は「13」と番号が振ってあります)と推定しました。
 ㊧が10年前に撮影された防火水槽の点検風景、そして㊦が今日撮影した写真です。 
f:id:miffy17s:20210407130833j:plain:right:w350 これらの写真を見て「懐かしいなー」と思われる先輩会員もいらっしゃると思います。
 10年も経っているのに、雰囲気はあまり変わっていないようです。

                ◇
 ここで、7日に行った作業を中心に、最近の巡回、維持管理作業を写真で振り返りながら、日進里山リーダー会が具体的にどのような作業をしているのかご紹介したいと思います。

f:id:miffy17s:20210407150922j:plain:left:w350 隊列をつくって緑地に入り、まずは散策路の安全確認をします(写真㊧)。
 f:id:miffy17s:20210407151231j:plain:right:w350雨で表土が流れ、木の根がむき出しになっていて、つまずいたり転倒することがあります。それを防ぐため、できる限り取り除きます。
 f:id:miffy17s:20210407130938j:plain:left:w350伸びた枝が散策路に張り出し、歩く人の顔に当たったりする恐れがあるものも切断します。
 下ばかり見ていないで必ず上も見て、落枝の恐れがないかどうかにも注意を払います。
 f:id:miffy17s:20210407131344j:plain:right:w350防火水槽のチェック(写真㊤)も大切な仕事です。水は十分溜まっているか、蓋はすぐに外すことができるかを確認します。
 木製テーブルやいすの拭き掃除(写真㊤)も欠かせません。家族連れなどが休憩して、お弁当を食べたりしますので、できる限りきれいにしています。
 f:id:miffy17s:20210407131032j:plain:left:w350今冬も雪の日が2日ほどありました。積雪は大したことはありませんでしたが、そんな雪の日も手を抜かずに掃除をします(写真㊤)。
 f:id:miffy17s:20210407153500j:plain:right:w350雨の日も、巡回は怠りません。西砂防広場がかなりの水深まで冠水したこともありますから、雨の日も要注意。
 f:id:miffy17s:20210407131250j:plain:left:h400看板や説明板、順路サインなども雑巾で汚れをぬぐいます(写真㊤)。
 散策路に落下している木の枝を処理(写真㊤)するのはもちろん、巡回途中でスズメバチを見つければ駆除もします。
 散策路上にむき出しになった木の根から樹液が出ているようなところは要注意。スズメバチを駆除したうえで、樹液が出ている木の根を取り除きます(写真㊧)。
 f:id:miffy17s:20210407131352j:plain:right:w370樹名板の新設、交換、補修(写真㊦)も仕事の一つ。ラミネートシートに穴をあけるパンチや紐、針金、挟み、木槌などの小道具も欠かせません。
 f:id:miffy17s:20210407131428j:plain:left:w350こうした小物類やコンパクトカメラ、望遠レンズを装着した一眼レフ、双眼鏡などを詰め込んだバッグを肩にかけ、腰に樹木用と竹用のこぎり、剪定鋏をぶら下げ、時には脚立まで担いで緑地内に入りますから、結構大変です。
 巡回日にチェックした事項を基に維持管理作業日に枯れた樹木を伐採したりしますが、巡回当日に処理できる場合は伐採などをすることもあります(写真㊤)。

f:id:miffy17s:20210407131336j:plain:right:w350 維持管理作業の日は、何本もの樹木の伐採(写真㊨)、草刈り(写真㊦)、竹林の整備など人手が必要な大掛かりな作業や土木工事に取り組みます。
 f:id:miffy17s:20210407132527j:plain:left:h400アップダウンがある里山の中なので車も重機も入れません。
 特に階段の補修(写真㊦)は大変。杭や踏み面の端に固定する横木に使う木材、つるはしやスコップ、掛矢(かけや=大きな木づち)などの道具は下から運び上げなければなりません。かなり重いので大変です。
f:id:miffy17s:20210407152927j:plain:right:w350 それに、こうした作業をこなす技術は昔は生活に必要でしたが、今では専門業者に依頼したりするようになったため、手仕事でこなすことができる人が少なくなっています。
 技術の伝承が課題となっているなか、巡回や維持管理作業は先輩から技術や仕事の段取りを学ぶ貴重な場となっています。 

水滴を湛えた北高上緑地のコバノミツバツツジ。雨に濡れると透けてガラス細工のようになる神秘の花「サンカヨウ」を思い出しました。

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 「また雨の日曜日か」とつぶやきながら、「 ウェザーニュース」のサイトを開きました。
 「4日からは二十四節気『「清明(せいめい)』、七十二候『玄鳥至(つばめきたる)』です」と、あります。
 「清明」は「清浄明潔(せいじょうめいけつ)」の略。「こよみ便覧」(江戸時代に書かれた暦の解説書)の清明の説明部分で登場しており、この時期は、草木をはじめとしたすべての物が活き活きとしており、清らかで美しいということを伝えているそうです。
 七十二候では、そろそろツバメが渡ってくる時期だと伝えています。

 f:id:miffy17s:20210329143606p:plain:right:w350今日は、日進市の北高上緑地で3月27日から日進里山リーダー会が開いてきた「コバノミツバツツジ観賞会」の最終日。雨空を眺めながら《どうしようかな》としばらくぐずぐずしていましたが、最終日のコバノミツバツツジをカメラに納めようと思い、緑地に出かけました。

f:id:miffy17s:20210404155716j:plain:left:w350f:id:miffy17s:20210404175710j:plain:right:w350 「観賞会最終日」なんてとんでもない、まだまだきれいに咲き誇っているのを見てびっくりしました。咲き始めが早かった「中尾根道」群落の標本木は、さすがにもう「葉ツツジ」となっていますが、「南尾根里道」の群落のツツジたちは健在(写真㊤㊨)。「南尾根十字路」のすぐ南にあり、毎年一番最後まできれいに咲くツツジは、まだ蕾がいっぱい。これからが出番の状況です。
 雨は明日5日未明まで残りそうですが、コバノミツバツツジはあと1週間ほどは楽しめそうです。

 f:id:miffy17s:20210404175950j:plain:left:h400ところで、今日一番の収穫と言えば、雨を湛えた可憐なコバノミツバツツジ(トップ写真と写真㊨)に出会ったことです。
 天気がいい日の深山や里山は、それはそれで素晴らしいのですが、雨の日も捨てがたい魅力があります。
 私は山登り歴がそろそろ半世紀になりますが、実は雨の日が嫌いではありません。土砂降りは別としても、雨の中の山歩きは、どちらかと言えば好きな部類です。 
 集中豪雨に遭遇し、普段はちょろちょろとしか水が流れていない黒部川源流が渡渉できなかったり、濁流のものすごさに怖気ずくことが何度もありましたが、花の季節にしっとりと降る雨は、なかなかいいいものです。特に、私のように撮影好きにとっては、絶好のシャッター日和となります。

f:id:miffy17s:20210404170153j:plain:right:w350f:id:miffy17s:20210404170156j:plain:left:w350 この日も、ファインダー越しに雨を湛えたコバノミツバツツジを愛でながら眺めている時、ふと「サンカヨウ」の花(写真㊨)を思い出しました。「サンカヨウ」は水(雨)に濡れると透明になる神秘の花です(写真㊧)。
 私が「サンカヨウ」に初めて出会ったのは、20年近く前。白馬の栂池自然園の中でした。白馬登山の途中で雨にたたられて途中の山小屋で宿泊。夕方、ちょっとだけ雨が途切れた瞬間に栂池自然園に飛び込み、偶然出会うことができました。
 自然園の担当者によると、「サンカヨウは咲く期間がとても短いので、なかなか見ることができない。雨に濡れて透明になったサンカヨウを見ることは、さらにとても難しい」のだそうです。雨に打たれるだけでなく、いろいろな条件が必要だそうで、私の場合、まさに奇跡的な出会いのようでした。

f:id:miffy17s:20210404182038j:plain:right:w350 その「サンカヨウ」と比べても劣らないほど、今日のコバノミツバツツジは素晴らしいと感じました。雨に濡れると透けてガラス細工のようになるのは「サンカヨウ」など、極わずかな白色の花だけのはずですが、薄紫色のコバノミツバツツジも、まさに同じような現象を見せてくれました。
 これは、感動ものだと思います。皆さんも、「雨の日は嫌だ」なんて言わずに、ぜひ北高上緑地にお出かけください。

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 ところで、「サンカヨウ」が水に濡れると透明になるメカニズムについては、はっきりとしたことは分かっていないようです。サイトを検索すると、いろいろな説が紹介されています。その中の一つで、簡潔で分かりやすいサイトを引用しておきます。フランスの田舎でのんびりと過ごしているというライター・水木誠人さんが提供している「暮らし―の(クラシーノ)」というサイトの一部で、「雨に濡れると透明になるサンカヨウとは?その理由から育て方、花言葉までご紹介!」というタイトルのページです。

サンカヨウがジワジワと濡れることで透明になる理由について、専門家でもまだそのメカニズムはわかっていません。ただ、花弁が薄く、花弁がジワジワと濡れることで水分を吸収しますが、光を吸収しないため、透明に見えるのではないかと想像できます。

たとえば、白いティッシュが水に濡れると、ティッシュが水分を吸収し、ティッシュそれ自体は透明に見えます。完全に同じではないにせよ、サンカヨウが濡れると透明になる理由はこのメカニズムに似ているのかもしれません。

ゆっくりと時間をかけて湿っていったサンカヨウの花弁は、乾燥すると元のとおり、白い花に戻ります。濡れると透明になる理由も、乾いたら白く戻る理由も、はっきりとわかりませんが、だからこそサンカヨウが貴重な花で、会いに行きたくなるともいえます。

 そのほか、「FNNプライムオンライン」の「濡れると透明になる花「サンカヨウ」が神秘的…なぜ白から変化? 2つの植物園に聞いた」(2020年5月31日)の中にも、同様に「"光の散乱"と"透過"がかかわっていると考えています」とする植物園関係者らの私見が紹介されています。
 かなり詳しく書かれていますので、興味がある方はぜひご一読ください。
 いずれも、ネットで「サンカヨウ」と検索すると、すぐにヒットするはずです。

見ごろを迎えた北高上緑地のコバノミツバツツジが日進市のHPで紹介されました。

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 北高上緑地のコバノミツバツツジが紹介されたのは、4月2日に更新された日進市ホームページ(HP)の中の「まちの話題」~「最近のニュース」~「2021年3月31日 市内の桜などの開花状況」のページです。
 「暖かい日が続き、桜などの花が満開を迎えました。3月30日・31日現在の桜(ソメイヨシノ)やコバノミツバツツジの開花状況をお知らせします」としたうえで、岩崎城址公園や岩崎川などの桜の様子とともに北高上緑地(岩崎町)で見ごろを迎えたコバノミツバツツジも紹介してくださいました。
 30日にたまたま私が「コバノミツバツツジ観賞会」(日進里山リーダー会主催)の当番として、南入り口の一角にある「みんなの小屋」前で待機していた際、市広報課担当者が取材のため来訪されましたので、「南尾根十字路」西の「コバノミツバツツジ群落」などを案内させていただきました。
 コバノミツバツツジだけでなく、ちょうど同時に咲き始めたマルバアオダモについても写真付きで紹介させていただきました。
 おかげさまで、いいPRになりました。ありがとうございました。

見ごろを迎えている北高上緑地(日進市)のコバノミツバツツジが1日付の中日新聞で紹介されました。

  コバノミツバツツジが紹介されたのは、同日付中日新聞朝刊なごや東版。年度替わりで記事量が多く、紙面に余裕がなかったようですが、「ツツジ5000本 里山彩る」という見出しで写真とともに大きく掲載されています。
 取材に訪れたのは、記事の隣の「尾東 こぼれ話」に登場した平木友見子記者。訪れたのは前日の3月31日。この日は、同緑地の保全・整備活動に取り組んでいる市民団体・日進里山リーダー会が毎週定期的に散策路などの点検巡回をしている水曜日だったため、15人ほどのメンバーが活動をしている最中でした。その姿を追いかけながら取材をしてくださいました。
 掲載された記事では、里山を薄紫色に彩るコバノミツバツツジを中心に、白い花と赤みがかった葉を同時に付けているヤマザクラ、2年ぶりに白い花を咲かせ始めたマルバアオダモなども紹介されています。
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 同じ北高上緑地内のコバノミツバツツジでも、それぞれの個体による個性や日当たりなど環境の違いから、咲く時期はまちまち。既にピークを過ぎたものもありますが、これから満開となるもの、蕾のままのものなど、状況はさまざまです。
 まだまだ、あと10日ほどは楽しめそうですが、今度の日曜日は再び雨模様、週明けの月曜日以降も曇りがちの日が続く予報が出ているため、青空に映える紫色の花が存分に楽しめる見ごろのピークは今週いっぱいとなりそうです。
 今年は、新型コロナ感染症拡大防止のため、例年開かれている「コバノミツバツツジまつり」(日進市主催)は中止になりましたが、その代わり日進里山リーダー会が規模を縮小した「コバノミツバツツジ観賞会」を開催中。4日(日)まで毎日、午前9時ー正午、南入り口駐車場の「みんなの小屋」で、その日の開花状況やお薦めスポットなどの情報提供をしています。

「山笑う」?! 「山が笑う」って、一体どういうことなのでしょう?! 笑ってごまかさずに、きちんと調べてみました。その結果は…。

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 「山笑う」―。
 青空がすっきりと広がった31日、日進市の北高上緑地駐車場に車を止め、北側の斜面に広がる里山の樹々を見上げた時、ふと、この言葉を思い出しました。
 もう半世紀近くも山登りをしているので、初夏になるたびに、出かけた先の山の中で、この言葉が表現する(と思っていた)光景に出会ったものです。
 最近は登山から遠ざかっているため、しばらく「笑う」山には接していなかったのですが、今日は何と、標高100㍍にも満たない里山で、ふいに「笑う」山に出会うことができたように思いました。
 昨日に比べると、黄砂の影響が和らぎ、きれいな青空が広がったせいもあるのでしょうが、文字通り、笑う山の中に身を置くような浮き浮きとした気分を味わいました。

 f:id:miffy17s:20210331170809j:plain:right:w350ところで、随分前から接してきたこの言葉。きちんとしたことも知らずに、適当に使ってきたような気がします。そもそも、どのような意味なのでしょうか。そして、どのようにした生れたのでしょうか。気になって、調べてみました。

 まず、その意味から。
 「春になり、新芽が出て花が咲き始め、山が色とりどりに変ってきた時の様子」
 「春の山の草木が一斉に若芽を吹いて、明るい感じになる様子」
 「新しい草花が芽吹いてきてそれに春の陽が当たり、山全体にのどかで明るい感じがする春の山の様子」
 …などと説明されています。似たり寄ったりで、キーワードもほぼ同じです。
 f:id:miffy17s:20210331170920j:plain:left:w350私は今まで「山笑う」と言えば「初夏」をイメージしていました。「新芽」の時期というよりは、季節がもう少し進んで、「新緑」がさわやかな5月ごろと勝手に決め込んでいたのです。
 里山や低山に傾斜している昨今と違って、3000㍍峰のピークだけをひたすら狙っていた若いころには、「花」とか「のどか」といった感性がほとんどなかったからなのだと思います。
 まあ、5月も春の一部でしょうから、間違いではないのかもしれませんが、実際はもう少しさかのぼって桜が咲くころのイメージで使われているような感じがします。 
 
 f:id:miffy17s:20210331171026j:plain:right:w350この「山笑う」という擬人化した面白い表現、一体、どこの誰が発した言葉なのでしょうか。きっと、センスがいい人のような気がします。
 どの資料を見ても答は同じで、「北宋の画家・郭煕(かくき、1023年?―1085年?)」ということのようです。
 ですが、出典については微妙に食い違っています。いろいろ調べた結果、どうやら次のようなことが分かってきました。
 日本で知られているのは、山水に関するさまざまな画論や名文などを集めた文集「臥遊録(がゆうろく)」。「臥游録」と表記するのが正確かもしれません。この「臥遊録」の中で郭煕の言葉が紹介されているようです。
 f:id:miffy17s:20210331171116j:plain:left:w350「臥遊録」の著者は郭煕自身という説明をするwebサイトもありますが、これはどうも違うようです。
 国立国会図書館が全国の図書館などと協同で構築している調べ物のためのデータベース「レファレンス共同データベース」の「レファレンス事例詳細」によると、「臥遊録」の著者は「呂祖謙(りょ そけん、1137年-1181年)となっています。
 ただ、「郭煕の言葉が最初に出てくる書物を出典として挙げるとすれば、(郭煕の)子の郭思が編集した『林泉高致集』とすべきではないか」と指摘する人も何人かいます。
 f:id:miffy17s:20210331171220j:plain:right:w350それはともかく、これらの中で紹介されている郭煕の言葉とは…。
「春山淡冶にして笑うが如く、夏山蒼翠にして滴るが如く、秋山明浄にして粧うが如く、冬山惨淡として眠るが如く」
 表記も含めて分かりやすく書くと、このようになります。
 「淡治(たんや)」は、原文では「澹冶」となっているようで、どちらも「うっすらと艶めくこと」だとか。
 そして、これが俳句などで季語として使われるようになったのだそうです。
 つまり…
 「山笑(わら)う」……… 春の季語
 「山滴(したた)る」……夏の季語
 「山粧(よそお)う」……秋の季語
 「山眠(ねむ)る」……… 冬の季語
ということになります。

 「この言葉、気に入った」という方もいらっしゃるかもしれませんね。俳句だけでなく、時候の挨拶としても使えますので、よろしければどうぞ。
 「拝啓 山笑う候、〇〇様におかれましては…」といった具合。
 「いかにも固い」と思われる方は、「山笑う」を「山笑のみぎり」「山笑の折」と言い換える手も。
 それでも「まだ表現が固くて使えない」という方は、この際「山笑う」を外して、次のようにすればいいかも。ある専門家のアドバイスを紹介しておきます。
 「草花の芽吹きに心浮き立つ季節がやってきました。皆様には健やかにお過ごしのことと…」
 ただ、「山笑う候」は、暦の上の春の半ばの時候の挨拶。あまり遅いと、ちょっとイメージがずれてしまうかもしれません。
 一部には「3月の時候の挨拶(書き出し)」とするサイトもあります。
 「わー、大変だ! 3月は今日で終わりだー!」
 今回のブログ、もう少し早く書けばよかったですね。すみません。

               ◇
 f:id:miffy17s:20210331173741j:plain:right:w100さて、いろいろ調べて、今回も多くのことを知りました。まさに《へぇ~、そうなんだぁ!》と、驚くことばかり。知らないことだらけで恥ずかしくなります。 
 駆け出し里山逍遥人こと「里山のぽんぽこりん」の勉強は、まだまだ続きます。

【出典、参考webサイト】
①フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」/山笑う
②haconiwa/「山が笑う」という言葉を、知っていますか?
③笑える国語辞典/山笑う
小学館デジタル大辞泉/山(やま)笑(わら)う
⑤季語・季題辞典/山笑う
Wiktionary/山笑う(やまわらう)
⑦季節お役立ち情報局/山笑う・山滴る山粧う・山眠るの意味。季語の時期や俳句は?
⑧小さな資料室/資料317 山笑う・山粧う・山眠る(『改正月令博物筌』・『臥遊録』より)
⑨レファレンス共同データベース/質問「『臥遊録』の著者、年代、内容などが知りたい」と回答
⑩四季おりおり快適生活/山笑う候が使える時期! 意味・読み方・お役立ち文例
⑪トレンド豆知識/山笑うとは? 意味や由来! いつの時期で季語としての使い方は?
⑫年賀状・暑中見舞いドットコム/時候のあいさつ(書き出し)と結びの文例
 

春の芽生えや若葉の時、ヤマザクラのように葉が緑ではなく赤くなるのは一体なぜ?

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 北高上緑地のコバノミツバツツジが見ごろを迎えた30日、妻と知人を誘って観賞に行ってきました。初めて訪れたという知人はコバノミツバツツジを中心とする里山の景観(写真㊤)にすっかり魅了された様子。樹々などの解説付きで案内した私も≪お誘いして分かった≫と、うれしく思いました。

f:id:miffy17s:20210330155121j:plain:right:w350 ただ、一つだけ反省点があります。それは…。
 緑地内のあちこちで開花しているヤマザクラ(写真㊨)の下を通りがかった時、こんな説明をしました。
 「基本的に、開花と同時に葉が出ます。花が咲いた後で葉が出るソメイヨシノと違う点です。しかも、葉が緑色ではなく、赤みを帯びているのが大きな特徴なんですよ」
 これはこれでいいのですが、では「なぜ緑色ではなく、赤みがかかっているのか」という点については、きちんと説明せずに終わってしまったのです。
 知っていながら説明を怠ったのではなく、知識としてしつかり身に付けていなかったというのが本当のところです。こういうことって、よくありますよね。現象面だけ、つまり上っ面だけ触れて、原因とか、背景とか、本質についてはあまり突っ込んで考えないことって。
 そこで、反省も含めて、きちんと調べてみました。
 驚いたことに、芽生えや若葉の時に葉が赤くなる植物は、ヤマザクラだけでなく、かなりたくさんあったのです。
f:id:miffy17s:20210330182100j:plain:left:w350f:id:miffy17s:20210330174019j:plain:right:w350 現在、91種類が確認されている北高上緑地の樹木リストの中で該当するのは、8種類。写真は、ヤマザクラを除き上から順に①アカメガシワ②アラカシ③カナメモチ④クスノキシラカシ⑥シャリンバイ⑦モッコク。
f:id:miffy17s:20210330195027j:plain:left:w350 どうやら春の赤い葉は、秋の紅葉と同様、「アントシアニン」という物質が関与しているらしいのですが、次に驚いたのは、どちらも原因というか理由については「はっきり分かっていない」のが現実、ということです。
f:id:miffy17s:20210330194540j:plain:right:w350 諸説あるようですが、「分かっていること」こと、「証明されている」ことも、いくつかあるようです。
 日本植物生理学会のホームページにある「植物Q&A」から引用します。「葉の色が新緑の時は赤で時間が経つと緑になるのはなぜですか?」という問いに対する回答です。

①葉が赤いと葉の温度(葉温)は高くなる。
②赤い色素(アントシアン)には、抗菌作用や虫の幼虫を寄せ付けない作用もある。
③赤い色素は、葉緑体(緑色色素を作り、光合成を行う器官)の発達を促進する働きと発達中の葉緑体を紫外線から守る働きを持つ。

f:id:miffy17s:20210330194517j:plain:left:w350 簡単に説明すると、アントシアニンによって寒さや食害を及ぼす虫たち、紫外線から守っている―ということになります。【注】
f:id:miffy17s:20210331063352j:plain:right:w350 f:id:miffy17s:20210330194501j:plain:left:w350まるで人間の「赤ちゃん」のようですね。赤ちゃんが文字通り赤く見えることについてもさまざまな説明がされていますが、赤い葉と共通するものも見受けられます。
 こうして葉はさまざまな外敵から守られながら成長。自分の力で外敵に対抗できるようになると、蓄積する物質が赤のアントシアニンから緑のクロロフィルに移行し、緑の葉に変わるようです。
 つまり、芽生えや若葉の時に葉が赤くなるのは、「生き残るための戦略」と言えそうですね。

f:id:miffy17s:20210331072507j:plain:right:w350 ただ、ちょっと変わっているのは①のアカメガシワ。「大崖道」の「見晴らしポイント」直下の崖に生えている赤いアカメガシワの葉を爪でこすると、何と緑色の葉が現れました(写真㊧)。赤く見えているのはアントシアニンによるものではなく、緑色の葉本体表面に赤い毛がびっしりと生えていたからだったようです。葉本体はともかく、この赤い毛はアントシアニンと関係があるのかもしれませんが…。これには少し驚きました。

 さて、いろいろ調べて、今回も多くのことを知りました。
 まさに《へぇ~、そうなんだぁ!》と、驚くことばかり。
 知らないことだらけで恥ずかしくなります。 
 でも、知らないことが多い分、知った時のうれしさもたくさんあるということです。
 知っているのと知らないのとでは大違い。
 里山で出会う樹木とも、今までとは向き合い方が違ってきます。

 時間が許す限り丁寧に調べ、一生懸命勉強してはいますが、素人故、事実誤認したり、早とちりしていることもあると思います。ご容赦を。「素人故」は、ただの甘えだとは思っていますが…。

 駆け出し里山逍遥人こと「里山のぽんぽこりん」の勉強は、まだまだ続きます。 

【注】
アントシアニンとアントシアン アントシアニン(英: anthocyanin)は、植物界において広く存在する色素、アントシアン(英: anthocyan、果実や花の赤、青、紫を示す水溶性色素の総称)のうち、アントシアニジン(英: anthocyanidin)がアグリコンとして糖や糖鎖と結びついた配糖体成分のこと。高等植物では普遍的な物質であり、花や果実の色の表現に役立っている。フラボノイドの一種で、抗酸化物質として知られる。
              出典: フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』

【出典、参考文献・webサイト】
①日本植物生理学会/みんなの広場/植物Q&A/葉の色が新緑の時は赤で時間が経つと緑になるのはなぜですか? 
②日本自然保護協会/「自然保護」NOV./DEC 2011 №524/今日から始める自然観察/春の赤い葉 秋の赤い葉
③庭園日誌(京都の造園会社・大幸造園のスタッフブログ)/カナメモチ、春先に赤い葉を出すのはなぜ?
④自然、発見!/若葉はなぜ赤い
⑤Botanicai Artsalon/春に紅葉?  赤い若葉の謎
⑥樹樹日記/赤い若葉、新芽はなぜ赤いのか?
⑦庭木図鑑 植木ペディア/アカメガシワ、アラカシ、カナメモチ、クスノキシラカシ、モッコク、ヤマザクラ
千葉県立中央博物館/アカメガシワ
⑨三貫清水の会/赤い色で身を守る…アカメガシワ
⑩神戸の花と木の様子/クスノキの落枝
⑪植木屋じぃじ/若葉は赤で身を守る
⑪森林・林業学習館/樟・楠
⑫フリー百科事典『ウィキペディアWikipedia)』/アントシアニンとアントシアン